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退職強要・人権侵害裁判  第一回証人尋問

『会社ぐるみ』の実態に一歩近づく

 2月25日、退職強要・人権侵害裁判の一回目の証人尋問が丸1日をかけて東京地裁で行われました。大岡委員長、人事担当者が宣誓をした時、裁判所は、張り詰めた緊張感が漂っていました。組合からは、大岡委員長、木村原告、会社からは、人事担当者、木村原告の当時の上司の1st、2nd、3rdラインが証人台に立ちました。

退職強要・人権侵害裁判 日程

4月8日  第2回尋問
東京地方裁判所 10時~17時

5月20日 第3回尋問
東京地方裁判所 10時~17時

組合への投書より

人員削減、成果主義の現場の惨状告発

はじめまして。東日本でIBM機器の保守業務を勤めている者です。
「かいな」をいつも拝見させていただいております。 私もここ数年の人員削減に耐えかねて投稿いたしました。
 お客様対応が多様化している昨今の傾向に逆行して続く削減により、個々の技術員への負担が重くなり、休日出勤と残業の割合も増え、更に保守エリアも広がり、当技術部でも体調に異常をきたしている者も数人でております。
 当然、全体に余裕がかけらもなくなれば、ミスも出てきますが、そこの部分だけ大きく取り沙汰され騒がれる日々が続いています。この惨状を上に伝えても、こちらを切って更に残された者への負担があがる展開が容易に予想されます。
 このままではいつか一人一人が24時間対応になるのではと、怯えながら過ごす毎日を送っております。この事が機関紙の片隅にでも取り沙汰されればという思いで投稿させていただきました。

成果主義のなれの果て
入院した部下をまったく気遣はないライン管理者とは

私は豊洲j事業所に勤務しています。
とある事情で足を骨折して1ヶ月入院しなければならなくなりました。
期待していたわけではありませんが、この間私の所属長T担当は一度も見舞いに来ませんでした。
 退院後も2ヶ月は自宅療養しながら通院してリハビリを行いましたので、都合3ヶ月出社できませんでした。
 3ヶ月後に出社したところ、所属長の知人が「部下が入院したなら見舞いに行かないとね。」と言ったところ、当の所属長は「私のことですか?」と言っていたと聞かされましたが、これには私よりも周りで聞いていた人たちの方が驚いていました。
 ライン管理者というのは業務目標達成のためにチームをまとめていくのが仕事ですよね。
 入院した部下のことをまったく気にもとめないライン管理者というのは、常識がないというより人間性を疑いたくなります。
これも成果主義のなれの果てなのでしょうかねぇ。

団交報告


50%以上の人が昇給ぜず!労働条件のおおきな変更

 組合は02月01日に会社と団体交渉を行い、賃上げについて追求をしました。以降は、その団交の抜粋です。
 
 賃上げについて団交を通して、組合は会社と繰り返し交渉続けてきているが、日本IBMの賃上げ率はいまだに0.95%とかなり低いものとなっている。

(組合) 引き続き、全従業員に対しての昇給を要求する。次に、可能性として、全体の昇給時期(7月)とは別に、ある特定の社員にのみ昇給を行っているか、その基準はなにか?

(会社) 就業規則にも、会社が認めた場合に行うことはあると書いてあるので、可能性としてはあります。人事管理は現場のラインに任せているため、ラインが必要性を感じたときに行う。当然、人事部門にも相談は受ける。

年齢別保障給撤廃は納得していない

(組合) 会社は年齢別保障給を撤廃したが、われわれ組合は、年齢別保障給の撤廃には合意していない。

(会社) 年齢別保障給の撤廃に対して、組合側が100%納得していないことは承知しているが、要望として承っておきます。

(組合) MBA/TCRの適用は労働者へ不利益(評価が低い場合には賞与に影響あり)を与えるので労働条件の変更に値する。この制度を適用するには、組合との合意が必要である。

(会社) MBA / TCRは一つの手法(メカニズム)であり、労働条件の変更には値しない。

(組合) PBC2以上に適用されるMBAは運用開始してから5年間で1回のみしか実施されず、PBC評価2+以上が対象のTCRは対象が50%に満たない昇給である。
この制度適用前は全員なんらかの昇給していたが、適用後は全員昇給しなくなっており賃金格差はかなり広がっている。このことからも、労働条件の大きな変更である。

(会社) 賃金制度の変更かどうかという観点からは、給料調整のメカニズムである。

内部留保金を社員へ還元すべき

(組合) 2008年から倍にも増えている(約800億円から約1600億円)内部で蓄えている金額は、従業員へ還元しないで、何に使う予定か?
リストラに使うのか?
リストラにつかうなら、かなりの人数をリストラできる金額だ。

(会社) ここで議論する内容とは思えない。

(組合) GDPは全世界に平等(人数費で)に分配されるが、何故、国に入った後は平等に分配しないのか。GDPを評価に応じて分配するのはなぜか。

(会社) これは全世界共通で、どこの国も同じように平等ではなく評価に応じて分配している。

(組合) グローバルが決定したことに対して、日本の経営が一部でも変えることができる力はあるのか?

(会社) 「ラインによる人事管理」と「職務と業績による処遇」、この二つの方針は米ⅠBMの経営者が考え方を変えないかぎり、日本だけが変更することができない。

(組合) 年2回の一時金は、組合が勝ち取った権利の、一律4ヶ月(1回当たり)を要求する。

(会社)組合からの要求としては受け取る。

(組合) 賃上げ、給料に関しては、非常に重要な問題であるので、これからも引き続き交渉を続けていく。

退職強要・人権侵害裁判
いよいよ証人尋問始まる
2月25日10時より東京地裁619号

 人権侵害・退職強要裁判の証人尋問がいよいよ始まります。下記は2009年提訴にあたっての声明文です。後に1人原告が増え、現在4人の原告で闘っています。


人格否定、暴力行為、誹謗中傷など
人権侵害による退職強要は許さない!

- 日本IBM・損害賠償請求裁判の東京地裁提訴にあたって -

(1)本日、JMIU日本アイビーエム支部組合員3名が、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBMという)を相手どり、人格否定、暴力行為、誹謗中傷などの人権侵害を伴う退職強要の差し止めと損害賠償を求め、東京地方裁判所に提訴した。
(2)被告である日本IBMは、昨年10月から年末にかけ、米IBMの指導のもと、用意周到に準備されたマニュアルに従い、育児休業中や健康を害していたり心身に障害をもっていたりして立場の弱い労働者、会社が恣意的に低評価にした労働者をターゲットとして、労働者の人格を否定する恫喝や誹謗中傷、暴力行為をともなう面接を強要して執拗な退職強要を繰り広げ、さらに退職に同意しない社員に対しては「48時間以内に退職を選択しなければ解雇する」と恫喝した。この結果、JMIUの推定ではわずか3か月間のあいだに約1500名の社員が泣く泣く自主退職の合意に追い込まれた。また、乱暴な会社の退職強要によって精神的ショックを受け、未だ出勤できない労働者や精神疾患の病状を悪化させた労働者が続出した。JMIUに加入し労働組合の力で退職強要を跳ね返した労働者に対しても、その後も、人事評価の格下げなどのいやがらせを続けている。
(3)日本IBMは、2008年12月決算においても、前年度とほぼ同水準の約1000億円の純利益をあげる優良企業であり、リストラを行う経済的必要性はまったくない。ましてや、整理解雇要件を満たさずに労働者を退職に追い込むという不当な目的のために、労働者の人権蹂躙という不法行為を会社の指示のもとに繰り返す日本IBMの卑劣なリストラは絶対に許されない。
(4)わたしたちは、単に3人の原告の権利保全というだけではなく、日本IBMの異常なリストラ・退職強要の実態を社会的に告発することによって、退職を余儀なくされた労働者の名誉を回復させ、今後はこのような退職強要を絶対に繰り返させないために裁判提訴に踏み切ったものである。また、この裁判は、全国に吹き荒れる「グローバル化」に名を借りた大企業のリストラ・権利侵害の攻撃に対し労働者の権利の雇用と生活をまもる闘いでもある。この裁判に必ず勝利するために総力をあげることを決意するとともに、全国の労働者・労働組合、国民のみなさんのご支援を心から訴えるものである。

2009年5月29日

全日本金属情報機器労働組合(JMIU)
同  JMIU日本アイビーエム支部
日本IBM慰謝料等請求事件弁護団

2015年に向けてリストラプロジェクト進行中

 近年、リストラを考えていない経営陣はひとりもいないのが現実です。したがって、労働者もリストラから身を守る体勢を整えておく必要があります。特に日本IBМは、2015年に向かって、大リストラプロジェクトを押し進めています。組合が提供を受けた情報では、従業員が震撼する規模です。今後、解雇や退職強要、会社分割や営業譲渡、労働条件の不利益変更を強行してくる可能性が極めて高い状況です。

評価『3』が1回でも危険

 2010年締めくくりとして、PBCインタビューがありました。そこで突然振りかかってくるのが低評価です。人事はPBC「3」「4」を15%つけるように部門に対し指示を出しているようです。更に業績の悪かった部門では、18%に達していると組合は推定しています。
 そして、そのPBCを利用して、今年もRAP(リソースアクションプログラム)面談が開始されています。今回の特徴は、①PBC「3」一回で退職面談が行われ②3月末の退職を迫り③就職斡旋会社の紹介をします。

リストラ実施理由説明できず

 会社は、リストラを実施する理由を説明できません。 大儲けしている会社が更に大儲けするために従業員を犠牲にしているに過ぎないからです。 そこで嫌がらせや、いじめで自ら退職するように追い込みます。退職強要を受けた社員は、今まで真摯に業務に勤め、会社のために貢献してきました。にもかかわらず多くの従業員は自分に何か過失があるように考えてしまうのです。

「辞めません」といえば大丈夫?

 退職面談が行われたとして、あなたが「辞めません」と決意していれば、大丈夫なのでしょうか。相手は「わかりました」なんて言いません。リストラのプロがついています。あなたを退職に追い込むためのシナリオは出来上がっています。次から次へと新たな攻撃が仕掛けられます。
 労働条件の不利益変更やリストラに立ち向かうために労働組合に加入して闘うことが力になることは明らかです。

レノボの解雇通知撤回させる

 まず、労働組合は、憲法や労働組合法で保障された「団体交渉権」をもっています。そして、会社の行っていることに対し抗議行動を行ったり、社会に訴えるためのチャンネルを持っています。更に相談できる仲間や当支部には10名もの弁護士がついています。昨年そのことをレノボ・ジャパン従業員の解雇通知を撤回させたことで証明しました。
 私たちは、従業員の雇用や労働条件を守るために闘う組合です。そのことをみなさんへお伝えしておきます。

退職強要・人権侵害裁判
『会社の組織ぐるみ』の退職強要を明らかに


退職強要はラインの暴走?

 2010年12月20日号に引き続き、IBM退職強要・人権侵害裁判の進捗状況についてお知らせします。先日の記事では、主に裁判の進め方を説明しました。
 最初に原告から、裁判を起こした理由、被告への要求を記述した「訴状」を提出して裁判が始まります。
 原告の訴状に対して、被告は「答弁書」という反論をまとめた文書を提出します。それに対して、原告が反論の文書を提出します。これらをまとめて準備書面といいます。この準備書面の交換を、公開の法廷で1ヶ月に1回程度の頻度で約1年間続けました。
 それと並行して、原告が証言台に立って、自らの心情を述べる「意見陳述」を行い、退職強要を受けたときの悔しさや無念さを証言しました。
 この準備書面の交換をとおして双方の主張の差異や争点が明らかになった時点で、ドラマでおなじみの「証人尋問」に移るわけですが、実はその前に「進行協議」という闘いがあります。進行協議では、誰を証人として呼ぶかを決めます。証人尋問のような華々しさはありませんが、裁判の勝敗を大きく左右する重要な局面です。
現在はこの進行協議の終盤にあたることを先日の記事で説明しました。

取締執行役員の証人尋問要求

 この裁判では「一部のラインの暴走による、個別の退職強要事件の集まり」なのか「会社ぐるみで行われた退職強要」なのか「退職強要すらなかった」のか、その事実が証人尋問での焦点になると思われます。
そのため、進行協議で、原告側は4人の原告に対して、実際に退職面談を行ったライン(所属長や上長など)を1原告あたり2~3人、申請しました。同時に今回の退職強要が会社の組織ぐるみの違法行為であることを証明するため、組合の委員長と当時の取締執行役員も申請しました。
 それに対して会社は、いきなり、人事のライン担当を証人として申請を行い、取締執行役員よりも、この担当が証人になるのが適切であることを訴える「陳述書」が、裁判所に提出されました。
 2008年のRAプログラムは、全国の数千人のラインを巻き込んだ大掛かりなものです。人事のライン担当が主導出来る規模のプログラムとは思えません。
 裁判官は「証人尋問の結果、人事ライン担当だけでは不十分と判断したら、原告から申請のあった取締役執行役員らを証人として追加採用することもある。」としています。
 私たちは、証人尋問で退職強要が「会社の組織ぐるみ」で行われたことを証明する所存です。

委員長2011年新春挨拶

あけましておめでとうございます
労働者の権利を守るために
   組合に結集し、共に闘いましょう

JMIU日本アイビーエム支部 中央執行委員長 大岡 義久

 「かいな」読者、組合ホームページをご覧のみなさん、明けましておめでとうございます。
新年にあたり、組合への日頃からご支援、ご協力に心から御礼申し上げます。

今年、IBMコーポレーションは設立100周年を迎えます。初代社長のトーマス・J・ワトソン・シニアは「良き企業市民たれ」を目指しました。そして、IBMの基本的信条は「個人の尊重」「最善の顧客サービス」および「完全性の追求」でした。これらは、私たち従業員の誇りでした。その後、これは2003年に見直されIBMすべての活動の基礎となる価値観・理念であり、社員の行動指針であるIBMer’s Valueがまとめあげられました。
 
しかし、成果主義による弊害が日本IBMの土台を揺さぶっています。それは、技術力を失い、更にお客様満足度が低下し、そしてチームワークのゆがみという形で現れています。

その結果、売上は2009年にはピーク時のほぼ半減の1兆円を下回る水準まで減少してします。それにもかかわらず、恒常的な事業売却とリストラやゼロ昇給、更に減俸を含むコスト削減により、非常に高い経常利益を維持し続けています。この利益は、従業員の犠牲の上に成り立っているという異常な状況です。

 会社は、一方的に従業員の処遇を不利益変更し、それを押し付けています。
今、労使対等という言葉がこの会社から消え去ろうとしています。会社が健全に成長し、利益を社員へ分配するという構図が崩れることは、非常に危険な方向に進んでいることを意味します。

 私たち組合は、会社のこのような姿勢に疑問を呈し、労働者の権利を守るために闘っています。
2011年も組合への支援をお願いするとともに、組合に結集されることを熱く訴えます。

団交報告
『ゼロ昇給』が何年も続くことの弊害を訴え
全社員の昇給要求

 組合は12月21日に会社と団体交渉を行い、賃金制度について会社を追求しました。以下は、その団交の抜粋です。

◆昇給について

 会社からこれまで、利益の760臆円をどのように、昇給原資に回しているか、なんに使ったから昇給に回らなく、お金がないのかの説明が全くされておらず理解できない。「TCRは評価1と2+のみが昇給するから、2以下は昇給しないのは当たり前じゃないか」と平然と言うが、組合は会社の提示したTCR、MBAという制度に合意したことは一度もない。従って、組合は今まで通りすべての社員に対しての昇給を要求する。
 利益が沢山あったから沢山昇給します、逆に利益が出ていないので昇給しないという考えではなく、世間の賃金水準/賃金動向を見て競争力のある賃金を実現するというのが会社の考え方だ。(中略)
 もう一方では、職務と業績に応ずる処遇ということで、職務といえばバンドの高低、責任の重い軽い。業績という意味では個人の貢献度によって賃金をより上げていく人、そうではない人。会社の考える公平とはそこである。ものすごく貢献していてものすごく重い責任を持っている人と、相対的に責任が軽い、貢献が低い人を同じに処遇するという考えはないから、貢献度に応じて処遇をする。組合は差別というが、会社は適切な格差を付けていくという考えだ。
 0昇給が何年も続くことの弊害ということがものすごく大きい。モチベーションに関して・・・。生活が出来る、出来ない・・・。生活が出来ないということはとんでもない。人によっては持ち家を持っている人もいるし、持ち家を持っていながら遠隔地に移動させられて両方の借金を背負って苦労している人もいる。そういう人にとっては、生活はギリギリだ。余裕がない人がでてきていると思っている。経営陣はそれが見えない状態になっているのではないかと言いたい。

◆生活保障給について

 年齢別保障給にたいしても、セーフティネットという形で復活せよ。組合は年齢別保障給の撤廃に際しても合意していない。毎年、昇給の時点で、必ずその書類をつけて組合に明示していたはずだ。それをいきなり「はい、撤廃しました」といわれても組合は納得できない。
 セーフティネットが時代によって本当に生きていけないような水準の時代と今のようにある程度の水準が保たれた中での格差という意味では、会社が適切と考える格差の中でとても生きていけないような水準で格差がついているとは考えていない。 (中略)
 セーフティネットがないと大変なことになってしまうという状況ではないというのが会社の考えで、今般、撤廃したということだ。

IBMの自浄システムは完全に機能停止

IBMコーポレーション(US)の
コンフィデンシャリースピーキング調査結果を回答

従業員を守ってはくれないことが判明

 以前お伝えした通り、コンフィデンシャリースピーキングコーディネーターが2度にわたって受理を拒否、組合ではこの問題をIBMコーポレーションにエスカレーションしていましたが、2か月の調査を経て回答が得られました。
 その結果は極めて表面的なもので「コンフィデンシャリースピーキングコーディネーターのロ―ルは、提示された懸念を当該問題の専門家に調査依頼することであり、その観点で今回の問題に関しては正しくハンドリングされていた。」という内容でした。
 日本IBMコーディネーターである労務所属のH氏も、USで調査を担当したグローバルコンフィデンシャリースピーキングコーディネーターも、自らの職務ロールを非常に限定した狭い範囲でとらえ、その範囲内で「問題はなかった。」との結論を出したものです。
 USの調査においては、労働契約法10条違反についてはまったく考慮されておらず、日本IBMのコンフィデンシャリースピーキングの運営が職務ロール通りに運営されていたか否かだけが調査・判断されました。その結果、本来問題とされるべき従業員に対する不利益については全く考慮の外に置かれた形となっています。
 一人の従業員として会社の違法行為を告発することはこのようにきわめて困難であり、したがってIBMコーポレーションの自浄作用はグローバルレベルでも全く機能していないことが明確になりました。「IBMの良心」ともいうべきコンフィデンシャリースピーキングがもはや従業員を守ってくれない今、自分を守る方法は皆が力を合わせて会社の違法行為と闘う以外には残されていません。退職勧奨やPIPを提示されたら、すぐに組合に相談してください。

退職強要・人権侵害裁判も山場に
年明けに証人尋問始まる

 証人尋問の期日が決まり、いよいよこの退職強要・人権侵害裁判も山場にさしかかっており、かいなで折に触れ、裁判の進行状況をお伝えしていきます。

退職強要・人権侵害裁判とは?

 2008年4Qのリストラ(会社の言うResource Actionプログラム:以下、RAプログラムという)で1500人もの仲間が会社を去っていきましたが、会社が辞めさせようとしたのは、この1500人だけではありません。数千人の社員に対して「退職勧奨」を行い、これを拒んだ社員には様々な形で違法な「退職強要」を繰返してきました。
 そして退職に応じなかった社員に対して、更に「業績改善プログラム」による退職強要を継続してきました。この過程で「心の病」を発症したり、悪化させて無念のうちに「自己都合退職」していった社員も少なくありません。
 これに対して、2008年4Qのリストラで「違法に退職を強要され、人権を侵害された」として、損害賠償と退職強要の差止めを求め、2009年5月に3名の組合員が東京地方裁判所に民事訴訟を起こしました。10月に1人の組合員が追加提訴し、現在、原告4人で闘っています。

裁判の進行

 テレビドラマでは提訴の後、すぐに証人尋問が始まり、華々しい論戦を繰広げますが、実際の裁判の進め方はこのようなものではありません。以下は、本裁判の説明です。

訴状の提出
 原告は裁判を起こす理由を訴状という文書にまとめ、裁判所に提出しました。本裁判では「会社から違法な退職強要を受け、人権を侵害された。会社に対し慰謝料の支払と退職強要の差止めを求める。」が訴状の内容です。

準備書面の交換と意見陳述

 原告の訴状に対して、被告は「答弁書」という反論をまとめた文書を提出します。それに対して、原告が反論の文書を提出します。これらをまとめて準備書面といいます。この準備書面の交換を、公開の法廷で1ヶ月に1回程度の頻度で約1年間続けました。準備書面の交換をとおして、双方の主張とその相違、争点を明らかにします。
 会社はこの準備書面で「RAプログラムにおいて退職強要はもちろん退職勧奨すら一切なかった。また会社が組織として、社員を退職させようと計画したこともない。(仮に退職強要が行われたとしても、ラインが勝手に行ったことであり、これを会社が計画したり、ラインに命令したことはない)」と主張してきました。
 それに対して、組合は「RAプログラムは会社ぐるみの退職強要プログラムであり、原告の上司たちは会社の命令で退職強要を行ってきた」ことを準備書面で主張し、証拠を提出して証明してきました。
 このため会社は一部の原告について陳述書(後述)で「業績改善プログラムでは退職勧奨そのものが一切なかった」と主張を後退させてきています。
 この準備書面の交換と並行して、意見陳述が行われました。これは原告が証言台に立って、自らの心の内を裁判官に語るものです。準備書面は代理人(弁護士)が客観的に事実を主張するものであり、原告は「原告A」と表現されるのに対し、意見陳述では「私」を主語にして、被告の違法行為のためにどのような悲しく辛い思いをしたかを述べます。一部の原告はRAプログラムの酷さと自らの無念を涙ながらに裁判官に訴えました。

進行協議

 双方の主張が出揃い、その相違、争点が明らかになったところで、進行協議を行います。これは誰を証人尋問に呼ぶかを決めるものです。
 双方が裁判所に証人を申請し、誰を証人として採用するかを裁判官がこの進行協議で決めます。この時、証人として申請された人を採用するよう裁判所に求めるために、証人候補者が自分の意見を述べる陳述書を提出する場合もあります。また場所は公開の法廷ではなく、裁判所の会議室で行われ、原則、非公開です。誰を証人尋問するかが、裁判の勝敗に大きく影響するため、双方の代理人が激しく火花を散らし、証人尋問とは異なるやり取りがあります。
 原告は4人の原告に対して退職強要を行ったライン(所属長や上長など)を原告1人につき2~3人、申請しました。同時に今回の退職強要が会社の組織ぐるみの違法行為であることを証明するため、組合の委員長と当時の取締役人事担当執行役員、取締役法務担当執行役員の3人も申請しました。
 現在、本裁判はこの進行協議の終了段階にあり、12月21日の協議で証人が決定される予定です。組合は退職強要が会社の組織ぐるみの違法行為であることを証明する所存です。

証人尋問 結審 判決

 年明けにいよいよ証人尋問が始まる予定です。進行協議で決められた証人が、主尋問(味方の弁護士が自分たちの主張を裏付けようとする質問)→反対尋問(相手側弁護士が主尋問の主張を突き崩そうとする尋問)→補充尋問(裁判官が疑問に思ったことを質問)の流れで証人尋問が行われます。
 そして証人尋問が終了すると結審し、数ヵ月後、判決が言い渡されます。

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