24年ぶりのベースアップを実現した 宇野沢組鉄工所支部のたたかい(連載①)

今号、次号の2回にわたりJMITU宇野沢組鉄工所支部のたたかいを連載します。筆者は、宇野沢組支部が所属するJMITU東京地方本部・南部地区協議会の小泉隆一議長です。
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2025年3月6日(木)は、宇野澤組鐵工所(社名:旧漢字。以下、会社という)で働くなかまにとって、とてもうれしい日になりました。会社から、約5000円(平均)の定期昇給に加えて、24年ぶりに正社員1万円、定年再雇用社員6500円のベースアップ回答を引き出したからです。
「製造部門の過去7年間分の累積赤字約17億円を解消するまでベースアップの検討はしない」という会社の「方針」を受けた24春闘。そこから一年間、JMITU宇野沢組鉄工所支部(支部名:常用漢字)と南部地協(以下、組合という)は、たたかいの旗を降ろさずベースアップを追求し続けました。
アンケートや一言メッセージで、異常な物価高騰により生活が極めて苦しくなっていることを訴える職場のなかまの声を集め産別団交で会社に紹介し、「方針」表明後は、怒りのポスター掲示、そして「会社表明は事実上の春闘団交拒否の不当労働行為」と指弾し、リレーストライキや東京地本未解決支部激励ストライキを決行してきました。
続く24夏闘、秋闘、冬闘で「第三者機関への提訴も辞さないこと」を表明し、会社に「方針」撤回を迫る産別団交を重ねてきました。そして25春闘で「シール投票」を行い従業員の多数の思いを可視化して会社にぶつける取り組みが決め手となり結実しました。
会社には製造部門と不動産部門の2つのセグメントがあり、長年、不動産部門の黒字が全体収支をカバーしてきた歴史があります。会社には、1970年代に全国金属・宇野沢組鉄工所支部にインフォーマル組織を潜入させ組合を分裂、新たに立ち上げた従業員組合(以下、従組という)に「アメ」政策を続けたことにより生活残業の蔓延など職場統制が崩れ、生産性悪化が進み、製造部門が赤字転落していく暗い過去があります。その後も産業構造の変化、OEM着手による利益率悪化、新システム導入時の混乱での納期遅れ、作業場レイアウト変更での効率悪化が次々に起こり、黒字化への道のりは困難の連続でした。
会社は「製造部門が黒字化すればベースアップも可能」など、製造部門の黒字化がベースアップの鍵だとして、過去20年に亘る団交で定昇のみの回答を押しつけてきました。
赤字が縮小してきたここ数年は「黒字になったとしても、当面ベースアップはしない。一時金で還元する。その際、会社が利益を溜め込むようなことはしない」と言質を後退させました。実際に黒字化した23年冬季一時金は、例年よりも若干上積みし2.0カ月の回答ではあったものの世間並には程遠く、かつ「会社が溜め込むようなことしない」との約束は反故にされました。組合は、23年度製造部門通期黒字化で迎えた24年春闘の団体交渉で、尚も会社がベースアップに応じない頑なな姿勢を続けることに抗議し、黒字化したにもかかわらずベースアップを行わない明確な理由を示すよう追求しました。
すると会社は「過去7年間の製造部門における累積損失(約17億円)を償却完了するまでベースアップを実施しない方針である。償却完了後にベースアップを検討する」との回答に至りました。
これを許せば、製造部門の黒字化を目指し奮闘を続けてきた職場のなかまの努力が蔑ろにされ、定昇だけでは今後十数年間に亘り実質賃金が低下し続けます。組合は、産別団交で「何度も前言を反故にする会社の姿勢は許されない」、「不動産部門の利益により会計上の累損は存在しない。製造部門に限定した累積損失を理由に従業員の厳しい生活を顧みず、過去の累積赤字の責任を従業員に転嫁する経営姿勢を認める訳にはいかない」、「今後の春闘で組合が物価高騰対策や生活改善のために賃金引上げを要求しても、会社がベースアップの検討すらせず拒否し続けることを予告したのは事実上の団交拒否である」と猛然と抗議。妥結せずにたたかいを継続することを宣言しました。
24夏闘では会社から2.3か月の回答を引き出しただけではなく、当面この水準を維持したい旨の表明を受けました。組合から「それは予算の賞与引当金をこれまでの2カ月から2.3カ月に上げると言うことか」の質問に対し、会社が「そういうことだ。収益に多少のブレがあっても維持したい」との応答がありました。
このことは組合がベースアップ実現を追求してきた一つの成果の現れでした。22年夏までの数十年間、2カ月を下回る1.4カ月~1.8カ月が常態化していたことを見れば、改善が進んだことは確かです。しかし、漸く世間水準に追いついてきたというのが職場のなかまの受け止めでした。(次回につづく)

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