テクノロジーと労働Barboraさん来日講演

 ~AI・アルゴリズムにどう立ち向かう~

 4月15日、日本労働弁護団と法政大学大学院フェアレイバー研究所が主催し、ILAWのテクノロジーと労働プロジェクトの主任研究員であるBarbora Cernusakovaさん講演会が法政大学(東京・市ヶ谷キャンパス)において開催されました。同講演のテーマは「テクノロジーと労働~AI・アルゴリズムにどう立ち向かう~」です。

AIへの問題意識が拡大

 Barboraさんの講演は、企業がAIやアルゴリズム(以下AI)を活用して、労働力の管理や人事評価、生産性の監視を行なっていることが問題になっているという問題提起で始まりました 。
 そして以下の具体的な問題点を挙げ、もともと不平等な労使関係をさらに悪化させる恐れがあると警鐘を鳴らしました。・AIによる労働条件の決定は、仕組みや判断の過程が労働者には不透明であり、どのような情報が収集され管理・利用されているかも労働者には明らかではないこと。・AIが労働現場で使われることで、労働者側の交渉力が弱まるだけでなく、個人情報をコントロールする権利が脅かされかねないこと。
 まさしくこのことは、日本IBMで起きている事案と類似しています。

労働者保護が進むヨーロッパ

 Barboraさんから、ヨーロッパの労働現場におけるAI管理に関する現状や取り組み、裁判判例が紹介され、労働者の保護がかなり進んでいることが理解できました 。
 例えばスペインではライダー法( 64条)が施行され、使用者が自動化された意思決定システムを利用した場合、システム管理者は労働者とその組合に対して、以下を含む相当な情報を提供しなければならないとしています。
・プログラム開発者とシステム導入者の名前
・システムの内容とその目的
・システムで用いられるトレーニングデータと変数の具体的情報

日本でも労働者保護を

 Barboraさんは、日本において、使用者によるデータの取得・利用、AIによる自動決定、労働条件の透明性確保、データへの労働者や労働組合のアクセス権などにもっと注目し、労働者の立場を改善するための行動が必要であると提唱されました。

来日の目的

 Barboraさんは、G7広島サミットに合わせて開催されているCivil Society7(C7)の会議に参加するために来日されました。公正な経済への移行ワーキンググループによる分科会では、Barboraさんが登壇し、AIによる労務管理の中で、労働者と消費者の権利を確保するための方策について議論がなされました。

日本IBMのAI不当労働行為事件を聴取

 JMITU日本アイビーエム支部が東京都労働委員会に申立を行った「AI不当労働行為事件」について、Barboraさんが強い関心を寄せ、組合の担当弁護士と組合を交え事件の詳細について聞き取りを行いました。今後この事件について、ヨーロッパ諸国に広められることが予想されます。

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