レノボジャパンに対し解雇無効・地位保全の仮処分を申し立て

JMIU日本アイビーエム支部は、11月9日午前、レノボジャパンに対し、10月13日に行った組合員の11月13日付解雇予告は無効であるとして、東京地裁に地位保全の仮処分を申し立てました。

厚生労働省記者クラブでブリーフィングする大岡中央執行委員長

厚生労働省記者クラブでブリーフィングする大岡中央執行委員長

申し立てでは、当該組合員に対し会社が「無意味な業務の指示を行った」こと、またそれは「人件費削減という会社の方針に基づき、債権者が自ら退職を選択するように仕向けるためのものであった」こと、そして「解雇に至るプロセスにおいて信義則違反(解雇予告前に組合からの要請にもかかわらず団体交渉・事前協議を実施しなかった)があった」ことを理由として、この解雇(予告)は無効であるとし、地位保全を求めています。

また、午後には厚生労働省記者クラブにおいて、記者会見(ブリーフィング)を行いました。実際に各社記者に対し説明用に配布した資料を「続き」に掲載しますので、詳しい内容をぜひご覧ください。

IBMから会社分割された「中国企業」による開発エンジニアの仕組まれた報復解雇

「言いがかりとしか思えない就業規則を適用した解雇」
「日本人開発技術者の使い捨ての実態」

<会社概要>

会社名称
レノボ・ジャパン株式会社
会社設立年月日
2005年(平成17年)4月28日
本社所在地
〒106-6118
東京都港区六本木6丁目10番1号六本木ヒルズ森タワー 18階
代表:03‐6439-2100
代表者氏名
代表取締役 社長 ロードリック・ラピン
資本金
3億円
従業員数
約700名(2010年6月1日現在、派遣社員を含む)

中国のPCメーカー「Lenovo」(聯想集団)は、2005年に米IBMからPC事業を買収しました。レノボ・ジャパンは、日本IBMからPC部門が会社分割され設立されたレノボ社の子会社です。開発部門は神奈川県大和市にあります。従業員のほとんどは会社分割によりレノボ・ジャパン移籍した元日本IBM社員です。

<いかに乱暴な解雇か>

・経緯と会社の対応

Aさんは、東京工業大学工学部卒業のThinkPad(ノートブックパソコン)開発エンジニア(41歳)です。日本IBМに入社し、2005年のPC部門の会社分割によりレノボ・ジャパンに移籍しました。そして2010年2月、開発費15%の削減を名目に開発エンジニアのリストラが始まりました。退職を拒否しつづけたAさん以外は、全員(29名)退職を余儀なくされる執拗な退職強要を受けました。会社は、退職しなかったAさんに対して3月から全ての開発の仕事を取り上げ、4月から専門外の翻訳をやるように言い渡しました。Aさんは、何もトレーニングがないまま、毎日毎日ひたすら翻訳業務をさせられたのです。

当該組合員が「翻訳」させられた資料の一部(コピー)

当該組合員が「翻訳」させられた資料の一部(コピー)

Aさんは「バージョンが古い2000年の技術書(10章分・350ページ)」「サンプル問題(800件と解説)」「論文40件」も翻訳しました。それにも関わらず、課題を増やしては「遅れ」を週三回の進捗管理の面談で責められました。更に問題はその成果物をレノボ・ジャパン社内で使用しておらず、意味のない仕事をさせられ続けました。

8月になると、2ndライン(上長)が「継続的にパフォーマンスを改善できない場合には解雇できるという就業規則があるのは読んだことあるか?読んでおいてくれる?」と何度か言ってきました。Aさんに対するこのような脅迫に対して、組合は抗議するとともに団体交渉を繰り返し申し入れましたが、会社は無視し続け、10月13日に突然11月13日付で、就業規則57条の2項により解雇予告をしてきました。これはあきらかに、仕組まれたものです。

第57条 「従業員が、次の各号の一に該当するときは解雇とする。

2 技能または能率が極めて低く,かつ上達または回復の見込みが乏しいかもしくは他人の就業に支障を及ぼす等,現職または他の職務に就業させるに著しく適しないと認められるとき。」


<Aさんの家庭の事情>

Aさんの奥様のお腹には、12月に出産予定の初めてのお子様がおられ、解雇のショックで流産の危険性があります。会社は、奥さんの体調が悪いため、定時で帰宅すると、定時で帰宅するとその理由を説明させ、それを責めるということをしていました。

Aさんは奥様に解雇通知の件を話すことをためらいましたが,苦渋の選択で話されました。「ショックを受けて体調を崩してしまわないか、というのが一番の心配でした。流産しやすい体質なので、ショックで早産になってしまわないか、夜、不安になって睡眠障害になってしまわないか。以前、心の病気になりかけて会社を退社したので、心が持つかどうかが今も心配です」そして奥さんの反応です。「あなたが悪いんじゃないよ、会社が悪いんだからね」と言ってくれたのがとてもうれしく感じました。そして「一緒にがんばろう」と最後に言ってくれました。

<社会的影響-解雇権の濫用が社会的に広まらない為に>

この事件は、解雇権の濫用そのものです。会社が、短期利益のみを追求し、その手段として人員削減をやりやすくするために、成績のみを理由にして解雇が自由に出来るようになってしまったら、労働者は安心して仕事ができず、生活がなりたちません。解雇理由とする成績にしてもAさんのように、日本IBMに入社して17年間、普通以上の良い成績を取ってきたにもかかわらず、いきなり悪い評価をつけられたあげくに、リストラ対象となり、退職を拒否すると、改善の見込みがない状態を作り出して、解雇するというひどいものです。組合などの後ろ盾のない個人であれば、いかに無謀で無法な会社の行為であっても何も抵抗できずに泣き寝入りとなってしまいます。私たちは、この事件をきっかけに解雇の濫用に歯止めをかけていきたいと考え行動を起こしました。みなさんの社会への問題提起をよろしくお願いします。

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