不当降格の手口次々と

パワハラ降格裁判進む

 降格とそれに伴う賃金減額の撤回を求めているパワハラ降格裁判(原告2人)の第6回口頭弁論が10月19日に東京地裁で行われました。この口頭弁論の過程で驚くべき会社の不当降格の手口が次々と明らかになっています。以下にお伝えします。

理由にならない降格理由

 原告の森谷さんに対して2016年7月にバンド6への降格が実施されました。降格の理由は、2016年3月から実施されたPIP(業績改善プログラム)の目標不達成というものです。
 会社は、森谷さんに対し降格を実施した理由について、2015年の人事評価(当時PBC)がPBC3であり、会社の期待を大きく下回ったことであるかのように主張しています。
 PBC3とPBC4の割合が日本IBMの従業員の5~15%であるにもかかわらず、その評価を受けた者全員が降格されていないことからすれば、PBC3であることを理由に降格をすること自体、恣意的な降格であることは明らかで、会社が人員削減を目的に降格していることは明白です。

存在しない手順書

 会社は、業務の「手順書」なるものを森谷さんが理解せず自分流の方法で業務を行うことに固執していたなどと主張しています。
 しかし後に、この「手順書」の提出を求めた求釈明に対する回答書で、この「手順書」なるものが存在しないことを会社自ら認めました。
 更に、森谷さんに対し業務効率化のために作業マニュアルに従った業務遂行の推進が期待されていたと主張しています。
 この「作業マニュアル」についても、「手順書」なるものと同様に、存在しないにもかかわらず、これが存在するかのように主張しているものと思われます。

退職を断ると報復

 森谷さんが所属していたSC&T内において人員削減が行われ、2014年1月には17名が在籍していたところ、2015年7月には14名となり、2018年8月には8名まで削減されていました。
 その中で森谷さんに対して退職勧奨が行われました。これを拒否するや否や森谷さんの業務を取り上げ、プレゼンテーションを頻繁に実施させるなどして森谷さんを退職に追い込もうとしたことが明らかになっています。
 上司は、森谷さんに対し課題を指示して、プレゼンテーションを行わせ、依頼した主旨に合っていない、資料の作り方が悪い、要点がぼやけているなどと抽象的なダメ出しのみを行い、また字が小さすぎるなどという些末な点をあげつらい、記載の意味を尋ねることもせずに「意味が全然分からない」、などとダメ出しを繰り返しました。これは社内で良く行われるリストラ手法です。
 会社の主張する様々な降格理由は口実に過ぎません。2015年10月からSC&T内において進められていた人員削減の一環として、退職勧奨が行われました。降格の実態は、上司からの退職勧奨を森谷さんが断ったことで、その報復として行われたものです。

降格に合理的根拠なし

 もう一人の原告は、2018年11月にバンド6に降格が実施されました。2018年3月30日~4月30日までの1ヶ月間に実施されたPIPにおいて、原告がその設定目標を達成できなかったとされたことがその理由です。
 PIPで設定された目標は、具体的には1ヶ月の期間にSOプロジェクトの「リーダー」の仕事を探してくるというものでした。
 しかしこの当時に存在していた条件に合う仕事は、たった9件だけでした。これらの仕事に原告が就けなかったのは、スキルの不一致や予算不足、候補者選定済みなどの理由によるものであり、原告の能力・適性とは何の関係もない事情でした。
 したがって、こうした事情により「リーダー」の仕事に就けなかったとしても、それだけではPIPを未達成とする前提を欠いており、合理的根拠がありません。
 さらに会社は、「その他のアサインについても形式的には原告に予算不足と伝えているが、原告がリーダー業務を行う能力・適性がないことを理由に拒否された件が多数あり、これを本人に直接伝えるのは憚られたためオブラートに包んで予算不足(ママ)で伝えたにすぎない」と言い訳しています。
 しかし、会社はその証拠を何ら示すことができないどころか、そもそもこれらのほとんどについて会社の認否は「不知」だったのです。「不知」ということは、会社がおこなった降格そのものが無責任なものであり、合理的根拠を欠いていたことを認めることに他なりません。

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