HDD会社分割争議終止符_労働条件の不利益変更を許さず

労働条件の不利益変更許さず

 2011年7月12日、最高裁はHDD分割争議で上告を棄却し、8年間の闘いは終わりました。
 「主文、本件上告を棄却する」、「上告費用は上告人らの負担とする」と告げた、たった十数秒の法廷で、8年間の闘いに終止符が打たれました。
 思えば、2002年4月、食堂に800人を集めた緊急会議でHDD部門を切り離すと発表してから始まったこのHDD会社分割争議は、横浜地労委の不誠実団交での提訴、横浜地裁の仮処分、横浜地裁本訴、東京高裁控訴、最高裁上告と日本IBMと法的機関で争ってきた日々でした。 そもそも、会社分割法、労働契約承継法は民法625条の「移籍は本人の同意がなければできない」という労働者を守る原則をなくし、会社分割の場合には、主に従事する仕事を引き継ぐ時、本人の同意なしで強制移籍ができるというものです。会社はそこに目をつけ、当時赤字だったHDD部門を会社分割法で6日間だけの会社を作り、脱法的に日立製作所に当時のお金で、2500億円で売却した会社(日立GST)です。


最高裁判決後の報告集会

経営者に都合の良い法律

この争議の中で明らかになったことは東京高裁の判決で「会社分割により労働契約が承継される新設会社が分割会社より規模、資本力等において劣ることになるといった、会社分割により通常生じると考えられる不利益は当該労働者において甘受すべきものと考えられる」と言い切った点です。これは正に労働者を保護するものではなく、経営者に都合のいい法律であることを裁判所がお墨付きを与えたものです。しかし、会社分割・労働契約承継法制の立法過程において、本判決の述べるような不利益当然甘受論は一切表れていません。むしろ、「会社分割というものが労働者に不利益を与えてはならない」あるいは「労働者の不利益を解消し、保護するために、別に法律による措置が必要」といった答弁がなされてきたことからも、この判決内容は立法者意思に反するものです。

名ばかりの個別協議

 さらに、最高裁の判決では会社分割にあたって「個別協議がされない、説明や協議の内容が著しく不十分な場合は、労働契約承継の効力を争うことができる」と労働者保護の必要性を認めてはいるものの、今回のIBMの場合は「個別協議が不十分とはいえない」と判断し、上告を棄却したものです。しかし、実態は個別協議とは名ばかりで形式的なものであったことは組合の当時のアンケート結果からも判明していたことです。このことからも裁判所は職場の実態をまったく無視した企業(経営者)に傾倒した見方しかできない組織だと痛感させられました。

共に闘った成果

8年間の闘いの結果だけを見ると残念の一言ですが、この闘いがあったからこそ、当初担当常務が「移籍して業績が悪化すれば製造要員は賃金は半分になる」といった労働条件の不利益変更をさせなかったことの意義は大変大きいと思います。
 最後にここまで共に闘った、弁護団、そして支援してくれたJMIUの仲間、地域の友好労組の皆さん、そして職場の皆さんに心から感謝を述べたいと思います。

[原告団長 金子秀男]

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