退職勧奨、PIP、賃金減額、いじめやハラスメントなどで困っていませんか?そんなときは組合に相談しましょう。上の「ご意見ご感想」リンクをクリックしてメールで送るか、平日なら右のボタンで相談窓口へご連絡を。
相談窓口

より広範にPIP実施! 組合へ早目の相談を!

 会社は例年にも増してPIPを実施し給与の減額調整や降格を強要してくる模様ですので、早目に的確な対応をする必要があります。
 会社は1月31日にラインを集めPIP(業績改善プログラム)説明会を開催し、2月27日には「2012年度のPerformance Managementについて」というPIP(業績改善プログラム)と減給調整についての発表をおこないました。すでに多数の相談が組合に寄せられており、今年は例年よりもはるかに大規模にPIPが行われている模様です。
 昨年かいな紙面で4回連載した「PBCを斬る」でPIPの問題点は紹介しました。PIP実施の狙いは、低評価された人に対してPIPを実施し、その目標を達成できなかった人に対して、減給、降格、解雇を行うためです。PIPはそのツールであり、改善の機会を与えたけれどだめだったという証拠とするためのものです。PIPはIBMだけでなく米国系総合情報サービス会社ブルームバーグなど外資系企業を中心に多くの会社で解雇を含むリストラの道具として使われています。

◆より広範に、随時に◆

 今までと違い、今回の発表で、直近の評価が3、4になった全員をPIPの対象者としたことや、昨年の就業規則改悪で、臨時減給が可能になったことから、今後はより多くの対象者にPIPを実施し、定期給与調整時に限らず随時減給される恐れがあります。
 また、発表をみると、PIPの本質を覆い隠し、さも減給や降格などからのがれるための救済処置であり、改善のための良いツールのように書かれています。おそらくラインも低評価された人に対してそのように話をするのでしょう。そもそも、低評価された人で納得している人はどのくらいいるでしょうか。IBMのPBC評価の仕組みは不明瞭で、2008年リストラ時に組合との団交で労務担当が発言したとおり、恣意的評価になる仕組みとなっています。このラインのさじ加減で決められてしまう曖昧な評価を前提に、減給、降格、解雇されてはたまったものではありません。
 では、なぜこの評価の仕組みは、公平性、納得性のあるものに改善されないのでしょう。
 IBMの経営戦略で、成長国である日本にはUSからの投資は期待できず、売り上げが伸びない中でも利益は求められ、その中心となる人件費削減のためには、今の仕組みは都合が良いのです。どのくらいコストを削減するか、そのためにどの程度人員削減をする必要があるかというのを割り出し、それに合わせて低評価者の割合が作られ、人選がおこなわれます。
 ですからPBC目標を達成してもよい評価がつくとは限らないのです。相対評価ですからいくらでもこじつけが可能です。最近組合に加入したり相談を受けた人の状況を見ると、今まで低評価をもらったことのない人が低評価され思い当たるのは年齢くらいしかないというケースもありました。
 会社は否定していますが、以上のことは、これまでの多くの方の実態に基づくものです。会社は2015年の1株当り利益20ドル達成に向けてソフトウエア買収などに200億ドルを投資するとしています。
 買収による人員増を抑えるためにも、ますます能力主義を口実にした人員削減に拍車がかかるのではと懸念されます。

◆すぐに組合へ相談を◆

 所属長にPIPの話題を切り出されたら、PIP開始を承諾せずに、すぐに組合に相談してください。すでに多くの人が組合の門戸をたたいています。一人では闘えません。会社は過去に繰返したリストラでのノウハウを蓄積しているのみならず、他企業の経験をも参考にしています。
 組合に入り皆で力を合わせれば、一方的な労働条件の不利益変更と闘うことができます。

予断と偏見に満ちた異常な判決

―日本IBM人権侵害裁判判決批判 ―

◆裁判所が死んだ日◆

昨年12月28日、東京地方裁判所民事第19部(渡辺和義裁判官)において日本IBMの労働者4名(全日本金属情報機器労働組合・JMIU組合員)が申し立てた損害賠償請求事件の判決がありました。判決の内容は「原告の請求をいずれも棄却する」という原告の全面敗訴。原告はただちに東京高裁に控訴しました。
この事件は日本IBMが原告らに対して行った退職勧奨が労働者の基本的人権を侵害する違法なものであるとして損害賠償を請求したものです。判決は、退職勧奨の対象となった社員が拒否の意思表明した場合に会社が引き続き説得活動をしたとしてもそれが社会通念上逸脱したといえない限り当然許容できるものでありただちに違法とはいえないとしました。労働者への退職勧奨を許容・是認するきわめて不当な判決です。これまでの裁判例では、対象者の自由な意思決定を妨げての過度な勧奨は違法な権利侵害にあたるとしています。判決はこうした裁判例をも無視するものであり、「裁判所が死んだ」と言わなければなりません。

◆3000人を対象にした大リストラ◆

この裁判の背景には日本IBMが08年年末に行った大規模なリストラがありました。IBMが当初、会社そのものが主導するリストラ計画の存在すら否定しましたが、内部告発によって秘密裏のRAプログラムと呼ぶリストラ計画が存在することが発覚しました。
RAプログラムでは人員削減の目標を1万6千人いる従業員のうち1300人を退職させるとし、そのため「予定数の達成がリーダー(管理職)の結果責任」と強調されていました。その結果、管理職による執拗な退職強要が3000人を対象に行われたのです。
原告の場合、繰り返し退職の意思がないことを表明しているにもかかわらず、執拗に、面談やメールによって「業績が悪い」「スキルがない」「会社に貢献していない」「いつまで働く気があるのか」「(この会社では)60歳まで働ける人はありえない」などと迫ってきました。なかには、ペットボトルを振り回したり、机をがんがんたたいたり、激しく足を踏み鳴らすなど威圧しながら退職を迫る上司もいました。原告らは退職強要を受けるなかで勇気をもって労働組合(JMIU日本IBM支部)に加入し退職強要は止まりました。しかし、労働組合加入に踏みきれなかった労働者は泣く泣く職場を去らざるをえなかったのです。また、会社がうつなど精神疾患を患っている人をねらい撃ちにして退職強要の対象にしたため、病状をさらに悪化させてしまった人が続出しました。この時期にはたくさんの仲間が組合に加入し、その多くが退職強要のあまりにもひどいやり方に精神的にも疲れ果て本当は裁判に訴えたいという気持ちがあるにもかかわらずあきらめざるをえませんでした。4人の原告は、自分たちは退職を免れたが、受けた精神的苦痛は甚大であり会社は絶対に許せないという気持ちととともに、二度とこのような悲惨なリストラを繰り返してはならないという思いで裁判提訴に立ち上がったのです。

◆異常な違法性の判断基準◆

裁判では、このような退職強要が違法なものであるかどうかが争われました。
判決はまず、リストラを断行した2007年の経常利益が1654億円だった事実はまったく無視したうえ、「従業員がみずからの業績を向上させる努力を怠らない(いいかえると業績の悪い社員は雇わない)」というIBMの企業文化をいっそう促進するために「RAプログラム」は必要だったと認め、退職金割増などの退職支援が他社に比べて退職後の将来を充実していると絶賛しました。また、目標の3倍相当を対象に退職強要を迫ったことや成果主義での低評価者を対象にしたことを、紛争リスク回避のための合理的措置として肯定的に評価しました。そのうえで、退職勧奨の違法性の基準について以下のように示しました。

  • ①退職勧奨は労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動であり、応じるか否かは労働者の自 由な意思に委ねられているので、使用者が、退職勧奨に応じるよう説得することは何ら違法なものでない。
  • ②退職するつもりはないと意思表示している労働者に対し「なぜか」などと質問することを制約すべき合理的根拠はない。労働者が「退職しない」と言ったとしても、それをもってただちに退職勧奨を中断する必要はなく、引き続き「再検討を求めたり翻意を促すことは、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱した様態でなされたものでない限り、当然に許容される」
  • ③退職勧奨の過程で「戦力外と告知された当該社員が衝撃を受けたり、不快感や苛立ち等を感じたりして精神的に平静でいられないことがあったとしても、それをもって直ちに違法となるものではない」

この異常な判断基準をもって退職強要に違法性があるかどうかを判断するというのですから、これでは、拳銃を突きつけるほどのことがしないかぎりどんなことをやっても違法性はないという結論となるでしょう。実際、判決は4人の原告らに行われた退職強要について、「退職勧奨行為が社会通念上相当な範囲を逸脱する違法性はない」と結論づけたのです。

◆判決の問題点◆

判決の問題点は以下のとおりです。
第一に、判決が著しく予断と偏見にもとづく事実認定と判断を行なっていることです。判決は、被告の主張をそのまま引用する形で「戦力外」と呼び、使用者から「業績・評価が悪い」「仕事ができない」とみなされ「戦力外」とレッテルを貼られた労働者は、使用者から繰り返しの退職勧奨を受けても当然という考え方についても、労働者を見下すような予断と偏見に満ちています。また、事実認定についても、被告会社の主張はまったくの検討なしに受け入れているのに対し、原告(労働者)側の主張は、これもほとんど説明なしに事実上否認されています。
第二に、成果主義において低評価をつけられた労働者に退職を迫ることを認め、労働者の雇用をまもる経営者の義務(責任)を免罪していることです。労働契約法16条にあるとおり使用者の解雇権の濫用は厳しく規制されています。それは労働者の雇用安定は社会的に要請されているものであり、使用者には労働者の雇用をまもる責任があるからです。判決はこうした労働法制の原則から著しく逸脱しています。
第三に、判決は、資本と労働の不均衡な関係(資本家・使用者は労働者に対して圧倒的に強い立場にある)という資本主義社会の現実をまったく無視していることです。すなわち、渡辺裁判官の頭のなかでは、職場での使用者と労働者は対等な関係にあるのでしょう。だから、退職がいやなら応じなければいいのだから、その過程で、使用者側が少々乱暴してもかまわないと思っているのです(法廷でこの裁判官は退職勧奨を「タフな交渉」と表現しました)。しかし、現実は、職場のなかの使用者と労働者の関係は対等ではありません。そればかりか、使用者は労働者に対して絶対的な権力をもち、労働者はどんな業務命令にも応じなければなりません。また、労働者にとって失職は生活の糧を絶たれることです。そうしたもとで、労働者が使用者から「おまえは業績が悪い」「会社に貢献していない」「早く辞めたほうがいい」などと恫喝まがいの言葉を浴びせられることがどんなに精神的な苦痛となるかが理解できないのです。しかし、現代の労働法は、この資本と労働の不均衡を前提として、だからこそ、労働者を特別に保護しなければならないという立場にたっています。渡辺裁判官はこの初歩的な原則をすっかり忘れているようです。
第四に、判決は、これまでの最高裁判例を含む裁判例や行政判断からも著しくかけ離れていることです。最高裁判例などでは、①執拗で繰り返し行われる半強制的な退職の勧め、女性差別など法令に反する退職勧奨、ことさらに侮蔑的な表現を用いる、懲戒処分をちらつかせるなど退職勧奨の域を超える退職強要、退職の勧めを拒否した者への不利益取り扱いは違法としています(下関商業高校事件 最一小判昭55.7.10など)。また、行政判断では、2000年2月の神奈川労働基準局指導が、退職勧奨が違法となる判断として、①出頭を命ずる職務命令を繰り返す、②あらたな条件提示などもなく勧奨を続ける、③勧奨の回数や期間が通常必要な限度を超える、④精神的苦痛を与えるなど自由な意思決定を妨げる言動、⑤立会人の認否、勧奨者の数、優遇措置の有無などに問題がある場合をあげられています。今回の判決がこれら過去の裁判・行政の示した内容からも著しくかけ離れたものであることは言うまでもありません。
いま、日本では、まともな労働組合のない職場を中心に、同じような退職強要がひろがっています。とくに最近、顕著に増えているのが成果主義による低評価を口実に退職強要・解雇です。こうした問題の背景には、財界・アメリカが強く求めている「解雇の自由化」があります。すなわち、労働者の解雇に規制はいらない、自由に労働者を解雇できるようにしろという要求です。今回の判決はそうした流れのなかにあることを見ておく必要があります。それだけに、東京高裁ではなんとしてもこの判決を是正させることが求められています。

(JMIU書記長 三木陵一)

2012年春闘始まる

三つの重点を軸にした要求書を提出
いよいよ、2012年春闘が始まりました。わたしたちのたたかいは、「労働者のくらしと雇用を守り、企業の将来展望を開く」ことを目指しています。このことは、すべての人が安心して暮らせる社会をめざすことに通じるからです。
組合は、今年の重点要求として、①「すべての仲間の賃上げを行え」②「すべての仲間の雇用を守れ」③「業績改善プログラム・降格・減給をやめろ」を掲げ、その要求を2月23日に会社に提出しました。

賃上げをしない、させない成果主義

会社は、2005年10月3日発表の「人事制度の改革」発表以来、徹底した成果主義を推し進めてきました。当初「がんばれば賃金が上がる」という幻想をもった人も多かったと思います。組合は、従業員の賃金が抑えこまれる危険性があるとして機関紙で警鐘を鳴らしてきました。そして今それが現実となり、多くの従業員は成果主義に不満を感じ、怒りをもっています。それは、従業員の半数しか昇給しない仕組み、ごく一部の人を優遇する賞与制度など、従業員に利益を還元しようとする会社の姿勢がないからです。いま、会社が行っていることは「賃上げをしない、させない成果主義」なのです。その結果、会社の「年齢別保障給」を下回る社員が多く出てきたため、その制度を廃止するまでに至っています。

「すべての仲間の賃上げを行え」

組合の賃上げ要求に対し、会社はまったく応じようとしていません。春闘アンケートを実施して明確になったことは、毎月の支出で7万円以上の赤字を抱えている従業員が多く存在することです。これは、会社がベースアップの賃上げを実施していないからです。そこで、今年の賃上げ要求として、2006年からの1万円のベースアップと今年度の賃上げを加え、「一律10万円の賃上げ」を要求しています。これは決して高い要求ではなく、現実的なものです。7年間も昇給がない方もいます。お子様の教育費に支出のかかる年代の方もいます。更にバンド7の給与レンジ下限に達していない方、裁量労働勤務制のもとにサービス残業を強いられている方など、会社が労動者から搾取している賃金の還元を実現させる要求です。

「すべての仲間の雇用を守れ」

会社は、2015年ロードマップを実現するため、大規模なリストラを実施しようとしています。以前は、その対象者をボトム10(%)といいましたが、それがボトム15(%)になり、そして今年はボトム30(%)、すなわち5000人が対象になろうとしています。そこから、会社が目指している人員削減計画が推測できます。このような会社の横暴を許さず、従業員の雇用を守らなくてはなりません。

「業績改善プログラム・降格・減給をやめろ」

成果主義は、労働者の賃金を使用者の一方的な評価によって個別に決めるというものです。そして次々に改悪されていくのが特徴です。したがって、結婚、子育てなど生活費が増大してもそれが賃金に反映されません。それどころか、低評価を口実にした減給や降格を行っています。このように「賃金の生計費原則」を真っ向から否定する業績改善プログラム・降格・減給をやめさせなければなりません。
組合は、今年の重点要求項目を軸に、100項目以上の要求を会社に提出しています。今後、その要求と回答を機関紙、組合ホームページを通じて公開していきます。

退職強要・人権侵害裁判=続報

退職強要許す異常な判決

東京高裁に控訴

2011年12月28日、東京地方裁判所民事19部の渡邉和義裁判官は、JMIU日本アイビーエム支部の組合員4人が日本IBMを相手取って提訴した退職強要・人権侵害裁判において、全面棄却の判決を下しました。
判決内容は、社会通念や常識に反し、裁判官個人の主観の入った、証拠に基づかない結論ありきと思える不当なものであるため、原告は、そうそうに東京高裁に控訴しました。

◆会社と社員が対等?◆

渡邉和義裁判官は、会社と社員が対等の力関係であることを前提にし、退職強要を、「タフな交渉である」と言い、判決文では「説得活動」としました。また、希望退職者募集は一切なく、隠密に行われた事実上の指名解雇であるにも拘わらず、これらの証拠に則った事実を無視し、日本IBMの「成績下位10~15%の労働者を追い出す」という企業文化(ハイパフォーマンスカルチャー)を容認し、人員削減は経営の自由としました。
企業利益の最大化のための人員削減であるにも拘わらず、退職強要された社員が会社に残るのは悪だと言わんばかりの判決内容です。このような「判決」は、公平・公正さが最も求められる裁判所に対する信頼を大きく揺るがすものであり、高裁での是正が絶対に必要です。

◆地裁判決是正を◆

原告側は2012年1月10日に東京高等裁判所に控訴しました。もし、高裁が、労働者と労働組合に対するあまりにも偏見と敵意に満ちたこのような判決を是正できないとすれば、「裁判は死んだ」と言わなければなりません。
このままでは、あまりにも経営の自由を認めすぎるものであり、企業の中は無法地帯になることは明らかです。東京高裁に対しては、あらためて証拠、証人を採用し、審理を尽くし、地裁判決を是正するよう要請します。

上記の会社利益と社員数のトレンドを比較したグラフは、会社が行った人員削減は経営悪化を立て直すために行われたのではなく、十分な利益を出している会社がさらに利益を出すために行った、強欲な人員削減であったことを示しています。

 

異常な判決の内容

●IBMの特異な企業文化(ハイパフォーマンス・カ ルチャー)をそのまま受け入れ、経営的必要のない退職勧奨を正当化した。法的な裏付けのない判断をした。
●優遇された退職条件があれば、退職強要の条件が緩和されるとした。
●労働者の「退職しない」という明確な意思表示にも「会社の認識」というハードルを作った。 意思表示が明確にされた後でも「翻意する可能性」があり、会社の説得活動が可能であるとした。
●労働者と経営者(上司)という「支配された特殊な関係」の認識が無く、圧倒的な力を背景にした会社による「タフな交渉」を是とした。
●裁判官の推測により、密室において上司が不当な発言をするはずが無いという一方的な判断をした。
●裁判官は退職強要を断った報復としてPIPが行われた事実を切り捨て、推測により不当行為が無かったという判断をした。
●裁判官は証拠として提出した退職強要面談の録音内容を歪め、原告に不利な解釈をした。
●退職強要の結果、体調を崩して呼吸困難になり、点滴を2日間に渡って受けた原告の被害を裁判官はまったく取り上げなかった。

「IBM中央団交」報告・目標達成しても低評価 成果主義のPBCに抗議

 1月24日、組合は会社と中央団交を行い、「2011年12月期賞与」について交渉し、「PBC低評価」へ抗議しました。

会社回答に抗議

 組合は、本来会社が従業員へ支払うべき賞与のうち、GDPによって搾取された分の返還を求めています。
 これまでの団体交渉で、組合は会社が返還しやすいような様々なアイデアを提案してきました。これに対し会社は毎回「検討する」と言いながらも「それはできない」と回答してきました。
 今回の会社回答も「どこができるかと言う部分は、ご要求があれば検討をする」と、前回までと同じ内容であり、組合は強く抗議しました。 

会社は根拠を示せ 

 組合は、賞与の配分の基礎となる会社業績指標の根拠の開示を毎回要求しています。しかし、会社は開示しません。
 今回の回答は「要求の趣旨は理解しているので、開示は検討していきたい。ただし、いつなどということははっきり言えない」と言い、具体的な進め方について言及しませんでした。従業員に成果主義を押し付けているにもかかわらず、会社は根拠を示していないことを、自覚すべきです。

社内へは売上げ・社外へは利益が指標?

 会社は、従業員へは売上げの増減を強調し、社外では利益が会社業績の指標と強調しています。社内と社外とで異なる指標を使い分けていることを指摘し、これを追求しました。
 会社は「社内と社外と言っていることが違うと言うのは、株主には利益ということであり、社内ではビジネスを拡大すること、すなわち売上げがわかりやすい指標であり、どちらが大切というわけでなく、表裏一体である」と説明しました。
 組合は「売上げ減少の中で、利益を増やすための会社施策=リストラ」を危惧していることを伝えました。

法定障害者雇用率・2年連続未達成

 組合は、法律で定められている障害者雇用率を、2年連続で達成できなかったことは人事の怠慢であると指摘しました。
 これに対して、会社は「それは部分的なものだ。組合に言われるまでも無く、大事なことであると認識している」と回答しました。

内容より実施回数重視?

 組合は、PBC評価は従業員の給与に直接関わるため、賃上げ・一時金要求と同じくらい重要な交渉であると主張しました。また、本交渉を通して、一歩進んだ労使関係に持っていきたい旨、会社に伝えました。これに対し会社は「これが労使関係を左右するかどうか、理解に苦しむ」とし、「結果がなかったからといって、交渉していないと思われるのは残念だ」と、交渉内容よりも開催した実績が重要であるとの姿勢に終始しました。

PBC低評価への抗議

 理不尽な低評価に抗議するために出席した8人は、次のように発言しました。

    ・不当行為を労働局へ訴えたから低評価なのか?
    ・上司のコンプライアンス違反の業務命令を拒否したから低評価なのか?
    ・できないとわかっている数値を目標設定されたのに、なぜ評価できるのか?
    ・目標を達成したのになぜ評価4なのか?

 これらの抗議に対して、会社は「上司の恣意的評価についてはラインと話し合し合えばよい。相対評価でPBCの結果は決まる。ゆえに、低評価の人は高評価の人を蹴落とせばよいことになる」と回答しました。
 今後も組合は全従業員の賃金に関わるPBCについて追求し、低評価に抗議し続けるとともに、PBCの廃止を求めていきます。

IBMは法令を遵守せよ、障害者法定雇用率2年連続未達成

厚生労働省では、障害者雇用促進法に基づいて、身体障害者または知的障害者の雇用義務がある事業主などから、毎年6月1日現在の障害者の雇用状況について報告を求めています。  
 民間企業、国、地方公共団体は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、法定雇用率に相当する数以上の障害者を雇用しなければならないとされています。56人以上規模の民間企業では、1・8%とされています。
 組合は、実態を調査するため厚生労働省に情報開示請求を行いました。
 その結果、日本IBMは下記表のとおり、2年連続で障害者の法定雇用率を達成せず、社会的責任を果たしていない実態が明らかになりました。
 会社は、2008年にダイバーシティ・カウンシルの活動を新たにし、「女性」「障がい者」「ワークライフ」「GLBT(ゲイ・レズビアン・バイセクシャル・トランスジェンダー)」「マルチ・カルチャー」の5つのイニシアティブを開始したと発表しています。
 しかし、障害者の法定雇用率は未達成が続いていて、イメージ戦略の一つに過ぎないのが実態です。 この取り組みは、現場のラインが努力して達成できるものではありません。人事部門の責任で行う施策であり、達成できないのは人事の怠慢ではないでしょうか。
 社員に「コンプライアンス(法令順守)」と言うなら、まずは会社が率先して行うべきと考えます。

法定労働者数 障害者数 実雇用率 不足数
2008年 16,913 310 1.83% 0
2009年 16,112 292 1.81% 0
2010年 16,784 289 1.72% 13
2011年 16,526 290 1.75% 7

つぶやき・・・経営責任を従業員に転嫁、成果主義の歪み至るところに

 日本IBMは、ハイパフォーマンスカルチャーという言葉を使用し、それを人件費抑制の手段として悪用し推し進めています。成果主義は労働者の賃金を会社の一方的な評価によって個別に決めようとし、労働者の分断をはかるものです。また職場では責任を労働者に押し付け、経営者は業績改善の努力を行わなくなります。更に恒常的にリストラを行う異常な状況です。

・・・成果主義の歪み・・・

 社内では、成果主義の歪みが至る所ででています。それは成果主義の本当の目的は、従業員の賃金上昇を抑える為のもので、賃金抑制の効果を期待され導入されているからです。それなのに会社は、成果を評価して、それに応じた報酬を与えるから正当です、素晴らしい人事制度です、などと従業員を騙し続けています。
 そのことは、従業員の半数が昇給しない給与制度からみても明白です。
 成果を出せないのは、自己責任と主張する人がいますが、それはこの成果主義の本当の目的を分かっていないからです。成果主義を真に受けるような、結果的に偶然「優秀」になった人間が出世をしてリストラを実施して、社内の融和を乱しているのです。

・・・ボトム15%を作るPBCは廃止せよ・・・

 日本IBMでの成果主義の評価方法はPBCです。そこで行われているのは、成果主義ではなく、低い評価対象者を作り出すための減点主義です。
 成果は、「品質向上の度合い」や「社員の技術力」など、数値で表すことができず客観性を見い出せないものも多いのです。上司が人間である以上、その基準次第で貢献量に対して成果に食い違いが出ます。上司が社員に近いと、無意識に評価に先入観・偏見がかかってしまう可能性もあります。
 また、査定基準の設定次第では「貢献したのに評価が下がった」「がんばっても評価が上がらない」という事態にもつながります。上司が個人的に気に入らない従業員に対し、主観的・恣意的に悪い評価をつけたりもします。
 そのようにしてボトム15%の従業員が作られ、人員削減のための退職勧奨が実施されます。それに応じなければ、退職強要やPIP(業績改善プログラム)を実施するのです。

・・・会社の責任は雇用を守ること・・・

 会社の責任である「雇用を守る」とは、人員削減をしないことのみでなく、家族とともに安心して働き続けられることや労働条件の維持・向上をはかることがあります。これらが実践されて初めて、「真の自由闊達な会社」が達成できるのです。

JAL裁判・退職勧奨違法と認定!IBM裁判 不当さ鮮明に

 作年10月31日に東京地裁で日本航空(JAL)の短期契約客室乗務員(Aさん)の雇止め裁判の判決が言い渡されました。判決で当時の上司の退職勧奨が違法と認定され、JALと上司に慰謝料20万円ずつ(合計40万円)の支払いが命じられました。
 IBM退職強要・人権侵害裁判では、執拗な退職勧奨が違法とはいえないと認定されており、対照的な判決内容となりました。

◆上司の執拗な退職強要◆

 このJALの雇止め裁判はマスコミで大きく話題になっている146人の正社員の整理解雇裁判とは別の裁判です。しかし根っこは同じで、経営再建を迫られたJALが再建努力をアピールするために必要のない人員削減を強行し、正社員は整理解雇、短期契約社員(1年契約)は雇止めにしたというものです。
 Aさんは雇止め通知を受ける前に、上司から執拗に退職強要も受けていました。そこで地位確認(職場復帰)と退職強要による精神的苦痛に対する慰謝料請求を求めて提訴したものです。

◆退職勧奨 違法性認定◆

 判決そのものは「Aさんの職場復帰を認めない」という不当なものでした。しかし退職勧奨については違法性を認めました。Aさんの上司が繰返し、「いつまでしがみつくつもりなのか」「辞めていただくのが筋」「懲戒免職の方がいいのか」と、Aさんに執拗に自主退職を促していた点について、「社会通念上認められる範囲を越えた違法な退職勧奨」と違法性を認定しました。またJALの使用者責任も認め、Aさんの上司とJALに対して慰謝料の支払いを命じました。

◆IBM裁判では退職勧奨容認◆

 この判決の退職勧奨に対する判断は「退職勧奨を断っている社員に対して、退職勧奨を繰返し行うことは違法である」という、これまでの判例を踏襲した極めて妥当なものでした。
 それに対して、IBM退職強要・人権侵害裁判の判決は、退職勧奨が違法になるためのハードルを異様に高く設定しています。判決文では社員が退職勧奨を断っても「退職に応じることの利益・不利益を深く理解させるため」あるいは「真摯に検討したか確認し」、更に「再検討や翻意を促すため」、退職勧奨を繰返すことを容認しています。またその結果、社員が「不快感や苛立ち等を感じたりして精神的に平静でいられないことがあったとしても」違法ではないと、精神的苦痛を与えても違法ではないと論じた、極めて不当なものです。

◆偏見に満ちた裁判官の会社側に偏った判決◆

 日本IBMの退職強要の方がJALよりも酷かったことは言うまでもありません。「所属長の退職強要を拒絶すると、上長からサードラインまで出てきて、複数人から退職を強要される」「最後は弁護士資格を持った法務担当取締役執行役員が登場し、『48時間以内に辞表を出さないと普通解雇する』と脅迫される」「『このままだと低評価を受け、賞与は減額され、同時に降格対象になりうる』という脅迫メールと共に、再就職斡旋会社の紹介メールをセットで送りつけられる」などの違法行為が「会社ぐるみ」で行われました。
 また「面談中に社員の目の前でペットボトルを振回し、威圧的に足を踏み鳴らされる」などの暴力行為を受けた原告もいました。さらに投げかけられる言葉も「あなたに与える仕事はない」「この会社にあなたの居場所はない」「あなたは会社にいらない(人だ)」などと「退職」と言う言葉を巧妙に使わずに、原告の人間性を否定する言葉を繰返しして退職に追い込んでいます。しかし担当の裁判官は、会社の言い分を鵜呑みにして、これらを事実とは認定せず、違法性を否定しました。
 このようにIBM退職強要・人権侵害裁判の判決は他の退職強要裁判と比べても、特異な裁判官による異様に会社側に偏った不当なものでした。この不当な判決を覆すべく、組合と原告4人は1月10日に東京高裁に控訴しました。会社の退職強要攻撃を跳ね返すためにも、IBM退職強要・人権侵害裁判へのご支援をよろしくお願いします。
 また今後、退職強要が発生した場合は、JAL裁判と同様、退職強要に関与したライン自身も提訴の対象となりうることを追記しておきます。

勧奨容認し原告切捨て退職強要裁判で不当判決

 昨年末も押し迫った12月28日、東京地裁において、日本IBM退職強要・人権侵害裁判で原告らの請求を棄却する不当判決が下されました。
 「リーマン・ショックにより事業環境に関する将来見通しが更に不透明になった」中、2008年度に前年とほぼ同水準の約1000億円の純利益をあげていた会社には退職勧奨を許す一方、社員には退職勧奨を甘受し退職することになる結果も甘受せよと言っていることになります。

◆企業ぐるみの首切り◆

状況は極めて明白です。会社が、企業ぐるみで行った1500人にも及ぶ首切り事件です。その点を、原告も被告も裁判官も否定はしません。判決文にも、退職予定数を1300人と設定したが、過去の経験からその2倍半から3倍の人数を対象に退職勧奨すれば予定数に達するだろうと見込んだことや、この予定数の達成は、部門長やライン専門職のアカウンタビリティ=結果責任とされたこと等が明記されています。
 結果として会社はこの機会に1500人に及ぶ社員の首を切ることに成功しました。候補者に個別面談して「自発的に退職する」よう圧力をかけた結果です。
 これは、事実上の指名解雇と言ってもいい退職強要です。これに憤った4人の原告が提訴し、このような不当な首切りに歯止めをかける機会を提示したものです。

◆会社主張を全面採用◆

 判決は、「退職勧奨の対象となった社員がこれに消極的な意思を表明した場合であっても、それをもって、被告は、直ちに、退職勧奨のための説明ないし説得活動を終了しなければならないものではない」等の基準をたて、会社の主張及び会社側証人の証言を全面的に採用して会社の行った面談等は社会通念上逸脱した態様で行われたものではないと判断する一方、原告らの証言は切り捨てました。

◆不可解な推論や判断◆

 あらためて面談の状況を想定して振り返ってみましょう。候補者たちは考えてもいなかった退職をおいそれとは「希望」するわけにはいかない一方、勧奨する側は予定数達成に結果責任を持てと言われていますから退職するように圧力をかけざるを得ません。そのために判決文に出てくるように「上司の言葉遣いや態度次第では部下にとって圧迫と受け取られかねな」かったり、「戦力外と告知された社員が衝撃を受けたり、不快感や苛立ちを感じたりして精神的に平静でいられな」かったりしたでしょう。
 このような場で、この判決文に何度も出てくる「被告Aが、単に原告Bを激昂させ、感情的な反発を招く危険のある発言をあえてするとは考え難い」というような推論が成り立ち、それらを積み重ねた判断が正しいと本当に裁判官はお考えなのでしょうか?
 退職した人たちも原告らも自身の身を守るべく抗戦し会社側と行き違ったとしても自然であり、一方的に棄却されるべきものではないでしょう。その個々の場合の振舞いの当否を問うよりは、そのような場面を作り出すことが根本的に問題にされるべきでしょう。

◆判決を非公開に?◆

 会社は判決や証拠の一部を非公開にするよう裁判所に申立てました。そのような求めは、自身の側の不都合を自覚しているからではないか、とするのが社会通念ではないでしょうか。仮に読者がそれらに目を通す機会に恵まれたなら是非とも観賞していただきたい。現在の社会の深層を垣間見ることができるでしょうから。

◆控訴審へ続くたたかい◆

 退職勧奨を受けた日々から困難なたたかいを続ける中で、原告らはたくましくなってきています。その雰囲気から裁判官は錯覚されたかもしれませんが、原告らはあくまでも弱い立場の労働者です。
 彼らが勇気を奮って企業の理不尽な人員削減の手法がはびこるのをとめるべく提供した機会を、裁判切りすてました。
 日本で人事の毒見役をしてかつての名声を失ったこの会社が準退職強要をはびこらせるのを、裁判所が助長したことになるかもしれません。そうなることを防ぐべくたたかいは控訴審へ続きます。

「IBM中央団体交渉」報告
会社「目標開示検討したい」

 昨年12月12日に組合は「12月期賞与」、「解雇」について団体交渉を行いました。

◆12月期賞与

組合 我々が不信感持つ理由は、会社業績についての評価の根拠が「マーケットへ開示していないから組合にも開示しない」と会社が主張し、データを開示しないからである。

会社 (指標の開示については)この場(団体交渉の場)で機密保持(の契約を組合と会社間で締結することが)できないのかとの案も真摯に受け止めて検討している。

◆業績指標51の根拠、開示を拒否

 会社は(51の根拠として)「会社業績の3つの指標が目標未達」、「前年比で業績が低下」と主張しているが、売り上げは落ちているにもかかわらず税引き前利益は増益である。これは、従業員の努力の証拠であり、量的指標としては大きいはずだ。なぜ、51となるのか。売り上げ目標などの資料が一時金算出の元になるのだから、開示してもらわなければならない。

 (51の根拠としては)社長方針が「回復基調に戻す、すなわち、売り上げを上げて成長すること」であったがそれができなかったからである。
 売り上げ減2%を会社は重要視しているが、経常利益は10%あがっているというプラス要員はまったく公表しない。

 今から指標を変えることはできない。過去の指標も出すことはできない。

◆目標の非公開は不正につながることを指摘
 
 目標が公表されていなければ、経営者が後で好きなように目標を変えることができてしまう。現在はしっかりしているように見える企業でも不正を行ってしまって問題になっている。

 検討していきたい。意見をきいていきたい。 開示の縛りがあれば、透明性を保つ方法があるかと思うので、検討したい。

◆解雇問題

 昨年9月末に解雇された係争中の従業員は、会社が指定した解雇日の1ヶ月前にロックアウトされたため、私物がオフィスに残されたままになっていました。
 2010年2月に大和事業所で自殺者がでた際に、会社は「オフィスには私物は無い」として私物の返却を拒んでいましたが、今回の交渉においては返却を承諾しました。

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