【証人尋問】定年後再雇用不当労働行為事件

調査せず「適切に運用」と言い切る」

 10月28日、組合が日本IBMとキンドリルジャパンを相手取って東京都労働委員会に申し立てている定年後再雇用不当労働行為事件の証人尋問が行われました。
 この事件では組合が、日本IBMから会社分割でキンドリルジャパンに移籍したシニア契約社員の低すぎる給与に関して、会社が労使交渉に誠実に応じなかったことに対する救済を求めています。
 今回の証人尋問は、定年後再雇用賃金差別裁判(原告2名が東京地裁に提訴、現在係争中)の原告1名(以下、Aさん)の定年前後の待遇の相違に関する質疑応答を中心に行われました。
 定年後再雇用者の定年前、再雇用後の待遇の相違については、パートタイム・有期雇用労働法についての厚生労働省の通達で「法14条2項の説明内容のうち、待遇の相違の内容及び理由に関する説明をする際に比較の対象となる通常の労働者は、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近いと事業者が判断する通常の労働者であること」と定められています。さらに「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近い労働者」を判断する基準が定められています。
 今回、日本IBMの元人事・労務担当(以下、証人)が会社側証人に立ち、組合側弁護士(以下、弁護士)の尋問を受けました。そして、その証言から、定年前後の待遇の相違とその理由に関する十分な説明も無く、シニア契約社員をバンド3に格付けし、生活保障を全く考慮していない低賃金で雇うという、シニア契約社員制度の不当性が明らかになりました。
 以下に質疑応答の内容(要旨)を紹介します。

仕事を月給17万円相当に引き下げる

 証人は、シニア契約社員が月給17万円相当を超える仕事をしていた場合には、賃金をそれに見合うように引き上げるのではなく、仕事の方を月給17万円相当に引き下げる、と証言しました。
弁護士 現実に、もしね、実態の仕事をしている人が、重要度を含めて、バンド3以上のことをやっていたら、先ほど「正す」という言葉を使われたんですね。
証人 はい。
弁護士 「正す」というのは、どう言うことをいうことになりますか。
証人 基本的には、その会社の設計制度に合わせるように仕事を軽くする、縮小する、そういうことが含まれます。
弁護士 仮に、「じゃあ、これは本当はバンド3の仕事じゃなかったら、じゃあ(バンド)6とか7で賃金をあげます」とか、そういう正し方は、そうすると、そもそもない?
証人 それは、制度設計を根底から揺るがすので、基本的には運用レベルでの訂正になります。
弁護士 だから、「正す」という言葉は、逆にオーバーしていた分はやらなくていいよ。
証人 「そんなに任せちゃだめですよ」ということを部門にいうわけです。
弁護士 バンド3の仕事の範囲内でいいんだよと。
証人 おっしゃるとおりです。
弁護士 これが正す?
証人 これが制度だから。はい。

正社員との比較による待遇差の説明なし

 証人は「シニア契約社員制度は適切に運用されている」と団交で繰り返し回答していましたが、その根拠となるシニア契約社員と正社員との比較をしていなかったと証言しました。
弁護士 組合は、Aさんと同一部署の正社員として4人を特定して、Aさんとの待遇の相違の内容及び理由の説明を求めていますよね。
証人 はい。
弁護士 会社は、Aさんとこれら4名の正社員との待遇格差について、先ほど、「バンドがあまりにも違うから」ということをおっしゃっていますが、実際、仕事が同じなのかどうなのかというのを、具体的に所属長に確認はしたんですか。
証人 他の人との比較ということは、先ほど申したとおり、調べる以前の問題だと考えていますので、「この人とAさんどうですか」という調査はしてないですね。バンド7、8の人と3の人がそもそも違うということは、我々としても、先ほど言ったように、運用としては適切だと思ってましたので、その比較はやっておりません。
*  *  *  *  *  *
 組合側証人のAさんへの尋問の後、公益委員がAさんに質問し、シニア契約社員がしている仕事は定年前から継続している仕事であることに驚きを隠せない表情になりました。つまり大幅なバンドと給与のダウンを念頭に置いてのことと思われます。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。