定年後再雇用は権利 賃金75%減は違法

 厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げらたのはご存知の方も多いでしょう。現在、現役で働いているほとんどの人は65歳まで厚生年金が出ません。しかし、日本IBMグループの定年は60歳に止まったままです。そうなると、定年後、厚生年金が出る65歳までどうやって生活すればいいかという問題が出てきます。退職金を取り崩せば、老後の必要資金と言われる2千万円を残せません。
 これでは生活できないという国民の大きな声を受けた政府は、それまであった高年齢者向けの法律を改正し、企業に対して「希望する人は誰でも定年後に再雇用しなければならない」と義務付ける法律を作りました。これがいわゆる改正高年齢者雇用安定法(改正高年法)です。

シニア契約社員制度

 この改正高年法に基づいて作られた日本IBMグループの制度が「シニア契約社員」制度です。定年を迎える一定期間前にきちんと希望を会社に伝えれば、誰でもシニア契約社員として再雇用されます。会社は再雇用を希望した社員に対して適切な仕事をアサインする義務があります。「仕事が無い」という言い訳は許されません。

賃金75%減は違法

 ところがシニア契約社員制度には大きな問題があります。給与が低すぎるのです。月額17万円しかありません。賞与もありません。年収にすると約200万円にしかなりません。これではとても生活できません。
 先日、組合が発表した賃金実態調査結果からすると、50才代の平均年収は約850万円ですから、シニア契約社員になると現役時代に比較してたったの24%に落ち込んでしまうことになります。
 この状況は九州総菜という会社で再雇用の賃金が現役時代の25%にしかならないことを不服として訴え、最高裁まで行って争われていた事件と同じです。この事件、最高裁の結果がすでに2018年3月1日に出ており、原告側が勝った2017年9月7日の福岡高裁判決が確定しています。判決趣旨は「定年後に収入が75%も減る極端な労働条件悪化は、65歳までの継続雇用を義務付けた高年齢者雇用安定法の主旨に反する」というものです。まさに、賃金75%減のシニア契約社員制度は違法だという判決です。
 さらに、今年4月1日からは正社員との不合理な待遇差を禁止するパート有期雇用労働法も施行されます。会社は直ちにシニア契約社員制度の給与を見直すべきです。

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