毅然とした態度が身を守る

労災で損害賠償、自殺で上司を書類送検

 新入社員が上司のパワハラで自殺し、労災認定されたり、上司が書類送検される例が相次いでいます。これら新入社員の例に限らず、日本IBM社内でも同様の圧力があり、いつ同じような事件が起こってもおかしくない状況です。
 特にTSS部門の体質には問題があることが以前から指摘されています。各社員が労働法をきちんと理解し、毅然とした態度を取ることが身を守ることにつながります。

パワハラ自殺労災認定

 2017年にトヨタ自動車の入社2年目の男性社員が自殺しました。トヨタ自動車は当初、遺族に対し「死亡は上司の言動によるものとまでは認められず、会社として責任を負うものではない」と説明していました。
 しかし昨年9月、上司のパワーハラスメントが自殺の原因だったとして、労働基準監督署は労災認定しました。遺族側は、今後、トヨタ自動車に損害賠償を求める方針と報道されています。
 男性は15年入社。翌年3月に本社に配属され、翌月から日常的に上司から「バカ、アホ」と言われ、「こんな説明できないなら死んだ方がいい」と暴言、叱責を浴びるようになりました。また、個室に呼び出されて「俺の発言を録音していないだろうな。携帯電話を出せ」などと詰め寄られたとされています。3カ月間休職後、職場復帰し、別グループの所属となりましたが、同じフロアの元上司から再三にわたって嫌がらせを受け続け、「死んで楽になりたい」などと周囲に漏らすようになり、17年10月、社員寮の自室で自殺しました。

上司を地検に書類送検

 三菱電機の20代の男性新入社員が2019年8月に職場で教育主任である上司から「自殺しろ」「殺すからな」などと脅されたとの書き置きを残し自殺しました。30代の上司が自殺教唆の疑いで兵庫県警によって神戸地検に書類送検されました。自殺直前にも上司から、「おまえが飛び降りるのにちょうどいい窓あるで、死んどいた方がいいんちゃう」など、発言を受けたことが克明にメモされていました。
 また、17年にも新入社員の男性が職場の上司や先輩からいじめや嫌がらせを受けて自殺したとして、両親が三菱電機に対し約1億1800万円の損害賠償求める訴訟をを東京地裁に起こしています。
 他にも14年~17年に男性社員5人が長時間労働が原因で労災認定。そのうち2人が過労自死であったことが報道されています。

問題の多いTSS部門

 TSS部門のカストマーエンジニア(CE)は、会社のリースカー、すなわち社用車を運転して部品や工具等を運搬し、お客様現場のサービスにあたっています。ところが、お客様先からの帰路でのリースカー運転時間は「勤務時間ではない」と慣例的にガイドされていたため、ほとんどの社員が勤務時間として申請していませんでした。
 これはおかしなことです。リースカーを運転する時間は、「使用者の指揮命令下に置かれている」状況です。労働基準法はこの時間は勤務時間としなければならないと定めています。
 組合はこれまでリースカーの運転時間については、お客様先からの帰路であっても勤務時間としてガイドさせるように会社と交渉を行ってきました。昨年12月11日に開催された団体交渉において、会社は「明確に業務として行われているのであれば、きちんとつけて下さいということを徹底するのが会社の指導である」ということに合意しました。
 更に、TSS部門では、2時間以内は残業を付けさせないというが習慣が残っているため、「自主的に」「みんなつけてないから」「少しの時間だから」などの理由で、勤務時間として計上しない社員が多くいます。そもそも、残業時間は1分からでもつけるものです。少しであっても会社がサービス残業をさせることは労働基準法違反です。世間では、サービス残業が存在する会社はブラック企業と呼ばれます。
 2019年4月に働き方改革一括法が施行されて以降、把握できていない労働時間や隠れた(隠された)労働時間があってはならないのです。労働時間管理は、会社が労働時間を適正に把握するだけにとどまらず、自身を労災から守るため、適正な人員配置を会社に促すため、非常に大切なものです。本当に働いた時間が把握できなければ、会社は正確な業務実態を把握できないのです。
 まず、皆さん自身が自覚して毅然とした態度を取ることこそ、健全な職場環境を作る第一歩になるのです。

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