客先常駐で長時間労働を改善

-アイエスビー支部の取り組み-

ISB支部執行委員長 小泉隆一

 

 ISB支部では日本IBMの職場実態を悪い事例として用いて意識改革をした結果、素晴らしい成果を上げました。以下、小泉委員長からいただいた取組内容を掲載します。

36協定上限規制時間を大幅に短縮する労使協定を締結

 2016年、ISB支部は、『労働者の健康に重大な影響をもたらす異常な長時間労働を職場から一掃すること』を目的に、これまでの36協定上限規制時間を大幅に短縮する労使協定を締結しました。
 ISB支部では支部発足以来、長時間労働を問題視し、毎年会社に是正を求めてきたことが実を結んできました。
 これまで段階的に上限規制を強化し、特別協定に本人合意と組合同意を前提とすることを制度化してきました。
 会社は組合が届けた現場の声を改善点に加え、
・合理的な開発期間を確保する契約
・仕様変更を期間延長無しに受け入れてしまう交渉見直し
・要求仕様の集団把握
・Pj(プロジェクト)管理と要員管理の強化を実践し、労使で点検することを繰り返しました。
 さらに品質保証推進部を立ち上げPj管理の多重化を行い、問題Pj発生の際には、当事者だけに任せず、追加要員投入などPj採算を顧みない健康管理も行いました。
 こうした経験を通じて、不採算で経営を圧迫しない様、問題Pjの発生を抑止する施策が経営の重要なテーマとなり、長時間労働の改善(時短)に結び付くサイクルが形成されていきました。
 2015年「過労死・過労自死事件」の多発に世論が大きく動きだしました。厚生労働省も、労働局、労働基準監督署に過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)を設置し、長時間労働の摘発に乗り出すなど社会に大きな変化が生まれました。
 経営者にも労働者にも「時短」への意識の高まりが生まれてきたこの年、組合は過労死ライン80時間を超える36協定を是正すべき課題として要求。会社が上限を検討する猶予期間を1年間認めた上で、16年には同一内容での協定は締結しない旨を宣言しました。
 16年、組合と会社は、「特別協定月35時間(年6回限度)、月80時間、年570時間」とすることに合意しました。
 この他、連続長時間勤務による労働災害を防止する観点から、インターバル確保と、明休取得を促進することを確認しました。
 インターバル確保では、終業から始業まで8時間以上の無就業時間の確保を義務付ける試験運用を開始。欧州では11時間以上のインターバルが常識となっており、8時間では健康管理には不十分です。
 これを補う為、眠りの浅い職場での仮眠や深夜タクシー帰宅に変え、実睡眠時間を確保することを可能とする職場最寄りのホテル・宿泊施設の会社経費での利用を可とする対応を取り入れました。
 加えて、徹夜残業となった場合、明休の取得を原則とし、24時間を超えて労働させることが無いよう管理強化をしました。

時短を定着させる3つの改革

 時短を定着させる為に
「管理職の意識改革」
「顧客の理解促進」
「労働者の意識改革」
の3つの改革を柱として労使の共通認識としました 。
 管理職の意識改革として、管理職マニュアルを更新。36協定を遵守し違反した場合の刑罰を確認。総括安全衛生委員会では過労死、過労自死事件、これによる企業の社会的信用の失墜事例を紹介しました。
 さらに月初に計画する全従業員の月間就業予定のチェック。月中2回、実態把握と月末までの時間外労働予測時間を計算し、違反の可能性のある従業員の業務調整等、事前対策を講ずるよう管理職に通知する仕組みを定着させました。
 顧客の理解促進では、営業と部長職が全ての顧客をめぐり、理解と協力を要請しました。大方の顧客が「時短」を共通認識とし、職場での取り組みを交換する場になりました。
 「時短」に理解を頂けない顧客には取引の見直しも視野に入れた覚悟を持った取り組みを行うとの会社見解が示されました。
 労働者の意識改革では、社内報で説明を行い、支部は、機関紙「プチなび」で「考察『時間外労働』」として4回にわたり長時間労働是正を報道しました。
①日本IBMにおけるサービス残業について
②時間外労働の算出方法
③会社で発生したある部門のある課長職によるサービス残業強要の告発
④労働法制、電通の過労死事件、二方面のたたかい
 こうした取り組みで、時間外労働が大幅に減少し、そればかりでなく問題Pjの発生も減少させることに成功しました。

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