ILCと稼働率目標の矛盾【団交報告】

 

ILCと稼働率目標の矛盾【団交報告】

  -稼働率目標は休暇以外も圧迫する-

 

 前号では、ILCと稼働率に関する組合要求と会社回答を全文掲載しました。その回答内容の問題点を解説します。

解説:

会社回答(1)について
 具体的な時間数に関する要求を組合からは行っていますが、会社からの回答は総論的な内容にとどまっています。
 前半では稼働率は組織目標であり「あくまでも目標」と言っていますが、実際にはデリバリー組織に所属する社員には稼働率を偏重した評価が適用されており、アサインされた案件の契約額で確定する稼働時間で評価されています。
 稼働率が部門の重要な目標なのは容認するとしても、それを社員各自のノルマとしてその達成に全責任を負わせ未達成であれば低評価、賃金減額、PIP、退職勧奨勧告に結びつけるのは部門運営、会社経営の責任放棄です。後半の「休暇等で、その分、本来の業務に遅れが生じた場合」の回答は、裁量勤務制度適用の社員にとっては全く関係の無い話です。

稼働時間数分母の矛盾: 稼働率目標は休暇以外も圧迫する
365-(土日[52×2]+祝日&年末年始[17]+有給休暇[20])=224日が年間勤務日数
⇒ 224日×7.6時間=1702 時間が年間総勤務時間
Think40研修(40時間)+部門会議(12時間)+社内作業(52時間)=104時間
1702-104 = 1598 時間程度が有償作業可能な上限時間数
ところが現在の100%の分母は2080時間(40時間×52週)
ギャップの480時間=63日以上の時間を個人努力で捻出⇒休暇以外も圧迫

会社回答(2)について
 前半の間接作業時間の扱いに関する回答は、会社としては稼働時間数とは認めず、プロジェクトマネージャーに対応を押し付けて逃げています。
 お客様に請求ができない活動時間を評価されるべき正当な勤務時間として会社が認めないということは、デリバリー組織には正社員を雇用せずプロジェクト毎に契約社員を雇用するクラウドソーシング(かいな2283号)の考え方が既に当然の論理として使われていることを表しています。
 後半のFLCの徹底に関する回答は、コンティンジェンシーの活用等の承認獲得は難しくプロジェクトマネージャーに嫌われて低評価になることを怖れて申告できないことを無視した空論です。

会社回答全文(再掲)

(1)稼働率目標の改善要求への会社回答
 稼働率は会社経営や組織維持のために大変重要な指標です。組織のビジネス目標としても設定されており、目標達成をはかる重要な指標でもあります。このように稼働率はあくまで組織目標ですが、会社や組織の目標に向かって、社員の立場でも高い意識を持ってもらうために、年次有給休暇、研修受講、部門会議出席、その他必要な社内作業の時間を加味したうえで、個人の稼働率目標が設定されています。なお、あくまで目標であり、それ自体が休暇取得を妨げるものではありません。
 休暇等で、その分、本来の業務に遅れが生じた場合、ないし、本来行うべき業務を行えていない場合、その分は生産性を上げることで自らをカバーするべきですが、もしこのカバーにあたって時間外勤務が必要な場合については、時間外勤務のプロセスに沿って、社員から時間外勤務が必要であることを所属長に伝え、所属長はこれが妥当であると判断した場合には時間外勤務を認めることになります。
(2)ILCの改善要求への会社回答
 Non-Billable時間に関しては、お客様へのチャージ等のCost振替の対象ではないため、Billableの稼働率への計上をすることはAuditabilityの観点からも行うことはできません。なお、プロジェクトに関連した間接作業時間については、Claimすべきものもありますので、随時プロジェクトマネージャーに確認を頂く必要があります。
 会社は、FLCの徹底を促進しており、「過少申告を助長させるような状況」が存在するとは考えておりません。また、プロジェクトがオーバーランした場合は、コンティンジェンシーの活用等、ILCの計上が可能です。

 

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