解雇は労働契約法違反で無効

ロックアウト解雇第1次・2次裁判結審

 ロックアウト解雇第1次・2次裁判は、11月16日に最終弁論を行い結審し3月28日に判決がでます。水口弁護士が最終意見陳述を行いました。以下にその抜粋を掲載します。

 本件解雇は、労働契約法16条に違反することにより無効である。

1 本件審理で明らかになった本件の特徴

 一つは、解雇予告通知書に記載された解雇理由が全てほぼ同一の定型文言にて記載されていたという点です。その文言は、抽象的な「貴殿は、業績が低い状態が続いており、その間、会社は様々な改善機会の提供やその支援を試みたにもかかわらず業績の改善がなされ」なかったというものです。原告らが具体的な解雇理由を問いただしても回答しませんでした。団体交渉での説明さえ拒んだため、中労委で不当労働行為と認定され、会社も命令を受け入れ裁判所への不服申立を断念しました。
 二つは、原告らは、日本IBMで10年、20年以上働いてきたにもかかわらず、突然、業績不良・改善の見込みなしと解雇された点です。その根拠として挙げられるのはPBCという人事評価ですが、これは相対評価です。解雇を相対評価で決めたというのです。
 三つは、IBMでは、2012年以降、毎年、全世界的に人員削減が実施され、そのため毎年、ワークフォース・リバランシング・チャージ、すなわち人員再調整費用が計上されています。時期及び金額は会社発表資料で明らかです。組合員で解雇された35名を見ると、Ⅰ期は、2012年第3四半期で4億800万ドルで11名解雇、Ⅱ期は2013年第2四半期で10億ドルで15名解雇、Ⅲ期は2014年第1四半期で2億ドルで4名解雇、Ⅳ期は2015年第1四半期で2億8000万ドルで5名解雇と時期が合致しています。会社が計画的に被解雇者を選定して、予算措置がある時期に一斉に解雇していることは明らかです。

2 本件解雇は人員削減のための解雇であること

 本件解雇は、原告ら労働者個人の業績が低い結果だとされていますが、実際には、先ず人員削減の目標ありきなのです。この点を赤裸々に語ったのが原告酒本の上司です。この上司は「毎年毎年、組織を維持できないほどの人員削減をやらされている。そうなると辞めさせても影響が少ない人物を人員削減対象とする」と語っています。
 要するに、日本IBMは、経営側の事情による解雇には整理解雇の法理が適用されるため、これを回避するため、あえて原告らの業績不良、改善の見込みがないと、理由を偽装して解雇しているのです。

3 メンタル疾患について

 原告ら5名のうちメンタル疾患に罹患していた者が3名います。日本IBM社内でメンタル疾患は人事上も対策が必要な問題でもありました。HRの資料にも患者の調査結果などが課題として掲載されています。
 ところで、原告らの中にはメンタル疾患を上司に申告できなかった者もいました。それは、メンタル疾患を抱えているということが上司にわかったならば退職勧奨の対象になるのではないか、と恐れたからです。これを申告しなかったことが解雇の理由になるでしょうか?
 最高裁判所は、東芝うつ病解雇事件(平成26年3月24日・集民第246号89頁)の判決の中で「労働者にとって,自己のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった」として、その情報を申告しなかったとしても、使用者はそれに配慮すべき義務を負うと判示しています。ですから、本件解雇についても、メンタル疾患を管理職に申告していなかったとしても、やむを得ない事情があり、かえって使用者が十分にそれに配慮していなかった場合には解雇が社会的な相当性を欠くことになると言うべきです。

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