就業規則変更は違法、無効-賃金減額裁判始まる

12月12日に行われた第一回賃金減額裁判での原告側の意見書を掲載します。次回期日は東京地裁620号法廷にて2月20日10時30分開廷です。みなさんの傍聴をよろしくお願いします。組合Webサイトでもご意見を募集しております。

代理人意見書
東京地方裁判所民事第11部 御中
原告ら訴訟代理人
弁護士  岡田 尚

1 事案の概要

本件は、被告が、違法な就業規則の変更を行ったうえ、原告らに対し、当該変更後の規定を根拠に、減額率8.25%~12.8%にも及ぶ大幅な賃金減額をなしたという事案です。原告らは、当該被告がなした就業規則の変更は違法、無効であり、当該変更後の就業規則に基づいてなされた賃金減額も違法、無効ですから、当該減額措置によって支払われなかった差額賃金の支払を求めるものです。

2 就業規則変更の違法・無効

本件減額措置の根拠は、「業績が職務内容に対して著しく低いと判断された場合は、本給、賞与基準額、本棒及び定期棒基準額を減額することがある」とする被告における格付規定第6条3項にあります。同規定は、平成22年3月1日付けの改正で規定されたものです。
しかし、かかる格付規程の改正は、労働者にとって極めて重要な労働条件である賃金を減額するというそれまでになかった規定を創設したものであり、明らかな不利益変更です。この場合、労働契約法10条が適用されるところ、同条にいう「合理的なもの」とは到底いえません。
まず、本件変更後の就業規則は、減額の基準及びその幅について何の規定も存在しません。労働者にとって最重要事項の労働条件である賃金についての使用者による一方的減額措置すなわち労働条件の不利益変更について、使用者にフリーハンドを与えるものです。また、変更にあたって、代償措置は何らを講じられていません。内容は極めて不相当というほかありません。
そして、被告は本件就業規則の不利益変更により、高率の賃金減額を毎年行うことも可能になりました。これが累計された場合の労働者の不利益は甚大です。
さらに、業績順調な被告にとって本件就業規則の変更をなす経営上の必要性は全くありません。就業規則変更にあたって、労働組合との利益調整もすることもありませんでした。以上の事実からすれば、本件就業規則の変更は、労働契約法10条に違反するだけでなく、労使間の信義則に反するものであり、また、権利の濫用として、無効です。

3 被告による賃金減額措置の無効

被告が、原告らに対し、違法・無効な就業規則変更に基づきなした賃金減額措置が違法・無効であることはいうまでもありません。
具体的にみても、今回原告らの賃金減額率は、8.25%~12.8%となっており、賞与を含むリファレンス減額率にすると最高15.00%、最低でも9.99%、平均11.22%と高率の減額措置がなされています。原告Aにいたっては、2年連続でそのような高率の賃金減額がなされています。
このような高率の減額は、労働者の生活を脅かすものです。長年にわたって被告に勤務、貢献し、わずかながらの昇給で生活基盤を築いてきた原告らの実績を一気に台無しにするものです。
このような賃金減額は、労働者の権利を著しく侵害するもので、到底許されるものではありません。

4 賃金減額が労働者を退職に追い込む退職強要の手段であること

本件就業規則の変更及び賃金減額の特質は、被告が原告ら労働者を退職に追い込むための退職強要の手段としてなされたものであるところにあります。
被告は、被告が自由に賃金の減額ができるよう就業規則の変更をなし、原告ら一部の労働者に対し大幅な賃金減額をしたうえで、解雇通知をします。そして、労働者に対して、自主退職をするのであれば解雇を撤回し、賃金減額を行わない等の誘因を与え、労働者を自主退職に追い込み、これに応じない労働者については解雇するという手法をとっているのです。
現に、平成25年度に賃金減額をされた労働者は労働組合が把握する限り40名程いましたが、そのうち約15名は既に退職に追い込まれました。被告の狙いは実現されつつあります。また、被告は、平成24年以降、違法なロックアウト解雇を急激に推し進めています。違法なロックアウト解雇については、解雇された労働者らの訴えにより、その違法性が明らかにされつつあります。
被告による違法な退職勧奨、解雇のための第1手である被告による賃金減額が違法であることを明らかにし、被告の違法な退職強要により退職に追い込まれる労働者の増加を阻止しなければなりません。

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