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有期雇用社員は、契約期間が終了すれば雇用関係が終了するわけではない

 コンサルタント職で働くPC契約社員に対し、本人が契約更新を希望しているにもかかわらず、雇い止めを行う問題が発生しています。会社は、PC契約であれば、会社の都合で自由に雇い止めができると思っているようです。しかし採用時に「心配しなくても契約更新が行われるよ」と期待権を持たせる説明を行っていることが、採用された方の聞き取りからわかっています。その結果、レギュラー契約であった会社を退職してまで、転職をしてきた方が多いのです。これは大きな問題です。有期雇用に関する投稿がありましたので、掲載します。

◆過去の判例◆

 有期雇用の社員は、契約期間が終了すれば雇用関係が終了するわけではありません。1974年判決確定の東芝柳町工場事件では、仕事の内容が正社員である本工と差のない契約期間2か月ごとに更新していた臨時工の雇止めに対して、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で労働契約が存在していたとし、その後の雇止めは実質的に解雇にほかならないので、解雇に関する法理を類推適用すべきとして、有期雇用契約の更新後の雇止めに対して解雇に準じた制限が加えられるルールが確立されました。これに対して1986年判決確定の日立メディコ事件では、雇止めを受けた臨時員の上告は棄却されました。これは臨時員の雇用関係が比較的簡易な採用手続きで締結された短期契約を前提とする以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、正社員である本工を解雇する場合とは合理的な差異があるべきであるとされたためです。

◆明確でない雇止めのルール◆

 有期雇用の雇止めのルールは明確でなく、紛争も多いため、厚生労働省は、2003年に「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の告示が行われました。この基準は、2008年に改正されましたが、その1条1項では「使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない」とし、同条2項では「使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない」と規定して、使用者に契約時に「更新の有無」及び「判断の基準」を明示することを求めています。
 永墓さんのケースについて考えてみると、期間3年の契約を一度更新して6年間の雇用期間があり、コンサルタントとして正社員と同様の仕事をこなしており、臨時員の様な内容ではありません。また契約更新時には、雇用継続を前提としているから当時の使用者であるIBCSからは「更新の有無」の明示はなく、当然「更新判断の基準」の明示もありません。
 このような状況で、永墓さんを有期雇用だからといって雇止めすれば、解雇法理が類推適用されることは自明の理であります。
 震災ボランティアも大事であるが、世間にアピールするイベントばかりに注力せず、足元の社員の救済に目を向けてはどうでしょうか。

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